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m3コンシェルジュ 新井 常夫

リスクマネジメント・ラボラトリー

新井 常夫

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている新井 常夫です。

公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会 認定医業経営コンサルタントの立場から医療法人化を検討されている開業医の先生から多くいただく質問に5回シリーズでお答えしていきたいと思います。 (前回の内容はこちら

第3回の今回は「医療法人設立時に知っておくべき点 その1」についてご案内したいと思います。

医療法人の設立申請を都道府県へした後では、内容によっては変更できない場合や、準備に時間を要して申請期限に間に合わなかったり、変更することが難しく労力・時間・費用が掛かったりする場合などがあります。

下記の内容を参考にしていただき、後悔しない医療法人の設立をしていただければと思います。

今回お話しする医療法人社団とは、現在多くの開業医の先生が開設されている「出資持分なし基金拠出型医療法人社団」です。 (社会医療法人など他の医療法人とは、税率など異なる取り扱いがありますのでご注意ください。)

【開業医の先生からの質問 医療法人化編】
第3回
医療法人設立時に知っておくべき点 その1

【開業医の先生からの質問 医療法人化編】

第3回 医療法人設立時に
知っておくべき点 その1

■ 設立時に必要となる拠出基金

詳細は都道府県により異なりますが、概ね1,000万円以上で認められる場合が多いです。 個人事業から基金拠出型医療法人社団へ移行する際に拠出する基金は、現金以外の財産でも可能です。

医療法人の設立には、診療に関わるものを全て取り揃える必要がありますが、現在個人で使っている医療機器や設備備品を全て無償提供する必要は無く、現物拠出や、売買による譲渡で医療法人に買い取ってもらうことが可能です。

例えば、減価償却資産に計上されている医療機器や内装費用、保証金等を現物出資することの検討が有効になります。 (ただし、その価格の証明が必要になります)

基金の拠出金額は都道府県に認められる範囲内でできる限り少ない金額にし、拠出金額を超えた医療機器や自動車などの個人事業の財産は、無理に基金へ拠出せずに医療法人設立後に買い取ってもらう売買による譲渡の方が良いと思います。

[ポイント]

  • 売買による譲渡の方が、早い時期に理事長個人へ現金として支払える。
  • 基金の金額を少なくすることで基金の理事長個人への早期返還が可能になる。 基金の金額が少ないことで税務上の面からも有効になる。

■ 個人事業時の借入金はどうなるのか?

銀行などから借入金がある場合、開業時、改装時などの内装工事費用の設備借入金は、 基金拠出型医療法人社団へ引き継ぐことができます。

引き継ぐためには、その当時の見積書や領収書など費用明細の証明や銀行などへの借入申込書または契約書等も必要になります。

銀行によっては、個人事業から基金拠出型医療法人社団へ引き継ぐことを拒む銀行もありますので、他行への借り換えが必要になる場合もあります。

前号のメールマガジンでお話ししました通り、医療法人化を検討される多くの院長先生の個人所得課税が50%以上なのに対し、基金拠出型医療法人社団の税率は28%と圧倒的に低いので、できる限り基金拠出型医療法人社団に借入金返済を引き継ぎ、医療法人から借入金返済した方が、税務面のメリットがありますのでお勧めします。

ただし、開業時などのスタッフ給与や、家賃支払いのための事業資金の借入金や、個人使用目的での借入金、住宅ローンなどは基金拠出型医療法人社団へ引き継ぐことができません。 これらの借入金は、医療法人設立後も院長先生の個人所得で支払う必要がありますので、必要となる理事報酬金額の確認が必要になります。

クリニックによっては、医薬品の卸売業者(MS: Marketing Specialist)への買掛金があり、支払いサイトを3か月6か月などに伸ばしている場合、基金拠出型医療法人社団へ引き継げずに一括清算が必要になる場合がありますので、医療法人の設立申請前にご確認ください。

 

■ 賃貸物件(いわゆるビル診療所など)の場合

「医療法人は永続的な地域医療の提供」を目的としていますので、賃貸物件貸し主の都合で転居や廃院とならないように医療法人化についての承諾(10年以上の長期契約の覚書)が、必要になります。

医療法人化の手続きを進める前に貸し主や不動産会社に長期契約の覚書を交わしてもらえるか確認が必要です。

以前、あるクリニックで、長期契約の覚書以外のことは全て医療法人化の準備が整いましたが、大家さんに長期契約の覚書を書いてもらえず、結果、法人化できなかった院長先生もいらっしゃいました。

ただし、いわゆるクリニックビルのように入居者がクリニック専用の場合には、入居当初の賃貸契約書があらかじめ「長期契約」の内容になっていることが多いので、契約書をご確認ください。

 

■ 拠出した基金は、返還されますか? ?

都道府県によって異なりますが、概ね3年で返還が認められることが多いようです。 基金の返還の際には、利息を付けて返してもらうことはできませんので、できる限り早く返還してもらうことがお勧めです。

基金を返還してもらうためには、毎期の利益(剰余金)より代替基金を計上しなければなりません。 基金の返還スケジュールも含めて、理事長報酬、理事報酬の金額を検討する必要があります。

以前、医療法人設立後に相談で伺ったある医療法人では、拠出基金の金額を4,000万円、拠出基金の返還を10年と申請していました。

理事長と相談し、「早く理事長の手元に現金が戻ってくるように医療法人設立後に変更することができないか?」と県の担当者と協議したことがありましたが、基金の金額の変更も、基金の返還の時期も、どちらも医療法人設立後には絶対に変更できないと言われてしまいました。

医療法人の設立を私に依頼していただいていれば、こんなことにはならなかったと悔やまれた事例でした。

このようなことにならないように、医療法人設立申請前に提出する書類 「基金拠出契約書(様式6-4)第2条と第7条」の内容が、

  • 基金は、できる限り少ない金額(1,000万円に近い金額)になっているか?
  • 基金の返還は、できる限り短い期間(3年に近い期間)になっているか?

2点を必ずご確認ください

 

■ まとめ

  1. 設立時に必要となる拠出基金の仕組みや拠出の仕方をご存じないと、お手持ちの現金を多く拠出することになり、長い間使えないお金、増えないお金を作ってしまうことになります。
  2. 医療法人社団へ引き継げる個人事業時の借入金のことをご存じないと、理事長の所得税負担を軽減する機会を失うことになります。
  3. 賃貸物件(いわゆるビル診療所など)の医療法人社団での継続使用のことをご存じないと申請期日に書類が間に合わない場合や、契約書自体を作り替えることになり、余計な手数料を支払うことになる場合があります。
  4. 医療法人社団に拠出した基金が院長個人へ返還される仕組み等をご存じないと、多くの現金を使える機会、理事長の所得税を軽減する機会を失うことになります。
m3コンシェルジュ 新井 常夫

いかがでしたでしょうか?

今回は、都道府県へ医療法人の設立申請した後では、変更できない内容や、変更することが難しく労力・時間・費用が掛かる場合もある「医療法人設立時に知っておくべき点」をご案内しました。

残念ながら多くの開業医の先生が、少数のお知り合いからの情報で医療法人の誤った情報をお持ちの場合がとても多いのが実態です。

後悔することの無いよう、医療法人制度のご理解の一翼を担えればと思います。

次回は、「医療法人設立時に知っておくべき点 その2」として、

  • 医療法人社団の運営機関
  • 基金拠出型医療法人の最高意思決定機関
  • 社員と社員総会の議決権
  • 理事を選任できるのは社員
  • 社員総会の議決は1人一票で採決
  • 理事長、理事、監事に役員報酬は支払えても、社員に配当金は支払えません
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