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コンシェルジュ 花田 浩一

リスクマネジメント・ラボラトリー

花田 浩一

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている花田浩一です。

勤務医の先生は、医局に所属をしながら出向をしている形なのか、転籍なのか、それが公的病院なのか民間病院や診療所なのか、さらには勤務期間がどの程度なのか、など、社会保障制度の加入状況が異なるので、いざという時の給付内容が異なり、その後のライフプランに大きな影響を及ぼします。

そこで今回は、特に勤務医師の社会保障制度の現状について再確認し、ライフプランにおいてどのような点に注意(補完)するべきなのかを考えてみます。 開業の先生方も、勤務医の先生に代診を依頼したり雇用したりすることがあると思いますので、ぜひご確認ください。

それでは、どうぞ。
【必見!Dr専門 IFAと考える
「ドクターズ ライフプラン」シリーズ】 2022
「勤務医師の社会保障ってどうなっているの?」
 

必見!Dr専門 IFAと考える「ドクターズライフプラン」シリーズ

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「勤務医師の社会保障って
どうなっているの?」

■ 勤務形態で異なる社会保障の組み合わせ
現役勤務医師の「公的年金制度」と「公的医療保障制度」の組み合わせイメージ。
※ 下記は一例で状況により異なります。

  • 「厚生年金」 + 「健康保険(共済組合)」
    大学病院や市中病院勤務 等
  • 「厚生年金」 + 「健康保険」
    民間病院、医療法人の診療所勤務 等
  • 「国民年金」 + 「国民健康保険(医師国保)」
    個人立クリニック勤務 等
  • 「厚生年金」 + 「国民健康保険(医師国保)」
    法人化後のクリニック勤務 等

 

■ 公的年金制度
国民年金・厚生年金の負担額は年々上がっていますが、令和3年度分は次の通りです。

  • 国民年金保険料
    月額16,610円
  • 厚生年金保険料
    最大で月額59,475円(労使折半後。事業主と合計では月額118,950円)

いずれの年金制度にも、給付の種類として「老齢年金」だけでなく「遺族年金」や「障害年金」がありますが、国民年金と厚生年金でそれぞれ給付内容が異なるため注意が必要です。

参考データ: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/

※ 以下、先生方の一般的な状況を踏まえて月額報酬平均65万円以上の最大値でシミュレーション(令和3年度)していますのでご了承ください。 また今後の制度改定や財政難による給付割合の減額・物価等の変動要因で、将来の給付額は異なります。

 □ 老齢年金(老後資金)

  • 国民年金
    令和3年度の老齢基礎年金は、満額で年780,900円/年です。
  • 厚生年金
    計算式「平均標準報酬月額×5.481/1000 ×厚生年金加入月数」に当てはめてみると、令和3年度の老齢厚生年金は、報酬月額最大65万円・加入年数40年で年額1,710,072円/年です。

受給要件を満たした場合の老齢年金は、月額換算では国民年金の先生が最大で毎月6.5万円程度、厚生年金の先生は最大で毎月20万円程度となります。

補完するもの ・・・ 定期預金を含む預貯金、貯蓄タイプの保険や年金保険、資産運用等

 □ 遺族年金(被保険者死亡時の給付)

  • 国民年金
    受給要件を満たし、子供が18歳未満の場合に遺族基礎年金が支給されます。 令和3年度は、老齢基礎年金の最大額と同じ基本年金額780,900円に加えて、18歳未満の子供が第2子まで一人当たり224,700円/年、第3子以降は74,900円/年の加算になります。
  • 厚生年金
    計算式「平均標準報酬月額×5.481/1000×厚生年金加入月数×3/4」(平成15年4月以降)に当てはめてみると、令和3年度の遺族厚生年金は、報酬月額最大65万円・死亡時加入年数10年で1,282,554円/年です。

例えば18歳未満のお子様2名の場合、国民年金の先生は最大毎月10万円程度、厚生年金の先生は国民年金と合わせて最大毎月20万円程度となります。 ただし受給者の年収が850万円以上ですと遺族年金は受給できません。

補完するもの ・・・ 生命保険(死亡保障)

 □ 障害年金

  • 国民年金
    受給要件を満たし、障害等級表の1級・2級による障害の状態で「障害基礎年金」が支給されます。
    20歳未満の年金制度に加入していない子供自身も対象になります。 令和3年度の給付年金額は、1級976,125円・2級780,900円で、子育て中は第2子まで一人当たり224,700円/年、第3子以降は74,900円/年の加算になります。
  • 厚生年金
    受給要件を満たし、障害等級表の1級~3級による障害の状態で「障害厚生年金」が支給されます。
    計算式「平均標準報酬月額(※)×5.481/1000×厚生年金加入月数×3/4」(平成15年4月以降)に当てはめてみると、令和3年度の遺族厚生年金は報酬月額最大65万円・障害認定日時点の加入年数10年で、1級は1,603,193円/年、2級・3級で1,282,554円/年です。
    また、生計を維持している配偶者がいる時は、1級と2級に配偶者年金として224,700円/年が加算されます。

日本年金機構「障害等級表」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun
/tokyuhyo.html


例えば18歳未満のお子様2名+配偶者(専業主婦・主夫)の場合、国民年金の先生は1級で障害基礎年金が月額で最大12万円程度、2級は最大で10万円程度です。

また厚生年金の先生は、障害基礎年金と障害厚生年金を合わせて1級で最大毎月27万円程度、2級で最大毎月22万程度となります。 3級では障害厚生年金のみで配偶者加算も無いため毎月10万円程度となります。

補完するもの ・・・ 生命保険(重度疾患保障・障害保障・介護保障等)

 

■ 公的医療保障制度の分類と注意点
「健康保険・共済組合」と「国民健康保険・医師国保」に大別されます。

それぞれの負担額(保険料)は立場で様々ですが、給付の種類としては、療養費(療養費+高額療養費)や手当金、その他出産一時金や埋葬料等があります。

注意点(1) 高額療養費

所得区分で下図の通りとなります。

【高額療養費制度における、70歳未満の方の自己負担限度額の区分】

※ 療養を受けた月以前の1年間に、3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4ヵ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。

出典: 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額な医療費を支払った時(高額療養費)」をもとに作成
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/

例えば総医療費がひと月で100万円かかった時、平均的な所得層「区分ウ」は自己負担限度額が87,430円となりますが、「区分イ」では171,420円、「区分ア」は254,180円と自己負担額が上がりますので、一般の方と比べて多くの先生方の自己負担額は高くなります。

療養費を補完するもの ・・・ 医療保険やがん保険、特定疾病の保障等

注意点(2) 傷病手当金

被保険者が業務外の事由による病気やケガの療養が理由で、業務を休んで事業主から給料を受けられない時、健康保険や共済組合等では収入を補填する「傷病手当金」があります。

受給要件を満たすと、連続する3日間の待機(土日・祝日含む)の後4日以上仕事に就けなかった日に対して、月額換算で報酬のおよそ2/3が給付されます(賞与は除く)。

なお、今までは対象期間中に出社する「支給対象外の日」があっても支給期間にカウントされていましたが、令和4年1月1日以降からは対象外の日は除外してカウントできるようになり、通算で1年6ヵ月が上限となります。

出典: 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/

一方、国民健康保険や医師国保等では傷病手当金が原則対象外になってしまいます。 ただ各医師国保組合によっては独自の制度を設けているケースもあるため、内容を確認の上必要に応じて不足分を所得補償保険等でご準備ください。

補完するもの ・・・ 所得補償保険等

補足ですが、今年に入り一部の団体所得補償保険制度で「告知項目の大幅緩和」の動きがみられますので、今まで医的要件で加入を断念されている方も、改めて取り扱い窓口に問い合わせてみてください。

コンシェルジュ 花田 浩一

いかがでしたでしょうか?

多くの先生方が民間の生命保険や医療保険等に加入されていますが、加入時に営業担当者から先生方の社会保障制度を確認して提案がなされていない状況をよく耳にします。

民間の生命保険や医療保険等に加入する際にはまず、現在の雇用形態や公的社会保障を再確認いただき、無駄の無いように備えるとともに、今後の先生方ご自身の人生設計(ライフプラン)の一助としていただければ幸いです。

また、今回は労災保険について詳しく触れていませんが、勤務先医療機関との関係が「雇用」ではなく「業務委託契約」等の場合、労災が適用外となるケースがありますのでご注意ください。

3月から始まる「必見!Dr専門 IFAと考える「ドクターズ ライフプラン」セミナーシリーズ・2022」の2回目(4月24日(日))では、メールマガジンでお伝えしきれない内容をわかりやすく解説いたしますので、ぜひご視聴ください。

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