一般的に勤務医よりも開業医の先生の方が高収入だと言われていますが、実際に手元に残る収入で比較した場合にどれくらいの収入差があるかとお考えになられた先生もいらっしゃると思います。
厚労省 第21回医療経済実態調査の報告(平成29年実施)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa
/21_houkoku.html
から試算すると
【病院勤務医と診療所院長(開業医)の給与の比較】
- 病院勤務医
平均年収1,488 万円 (月約124万円)
- 診療所医院長(開業医)
平均年収2,749 万円 (月約229万円)
※ 診療所院長(開業医)は個人・医療法人を含む開業医全体の平均年収
開業医の年収は勤務医と比べ約2倍 (1.84倍)になり、やはり高収入を得るなら勤務医より断然、開業医となります。 ですが、この額は税額を考慮した場合の実際の手取り額ではありません。
そこで本コラムでは、勤務医と開業医の平均年収を一定の条件にて試算を行い実際の手取りの額の比較と、勤務医の先生が開業をなされる場合に勤務医の平均手取りと同額となる年収ラインを一般論としてご紹介します。
勤務医平均年収1,488万円の手取り試算
試算条件:
- 病院勤務医
- 所得のない配偶者、子どもなどの扶養親族なし
- 給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除のみ考慮
※ 千円の単位を四捨五入
年収1,488万円 - 【所得税199万円 + 住人税107万円 + 社会保険料189万円】
手取り年収 = 993万円 (手取り率67%)
開業医平均年収2,749万円の手取り試算
試算条件:
- 開業医
- 必要経費なし
- 所得のない配偶者、子どもなどの扶養親族者なし
- 社会保険料控除、青色申告特別控除のみ考慮
※ 千円の単位を四捨五入
年収2,749万円 - 【所得税764万円 + 住民税262万円 + 社会保険料112万円 + 事業税123万円 + 消費税102万円】
手取り年収 = 1,386万円 (手取り率50%)
今回の一定条件での試算結果の手取りで比較をすると、厚労省報告による年収差の1.84倍から1.40倍へと縮まる結果が出ています。 この要因には、所得が上ることで避けてとおれない税率や納めるべき税金の種類と各種控除の影響を大きく受けています。
先生方もご存知のとおり、日本の所得税の課税方式は「超過累進課税」ですので所得額が上るにつれ、超過した部分の税率が上がっていく仕組みがとられています。
参考: 【No.2260所得の税率 国税庁】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
また、試算結果での手取り率が50%となっており、『年収が上がっても、半分くらい税金で持っていかれるのでしょ?』と、所得の高い方々のお嘆きの声をお聞きになられたことや、あるいは漏らしたこともあるのではないでしょうか?
これも我が国の課税方式により、一定の年収を超えた部分に適用される税率の影響であることもお解り頂けると思います。
それでは、次に勤務医での平均手取りを得る為には開業後、年収をどれくらい上げれば同額の手取り(993万円)となる年収ラインを先の同一条件で試算をしてみますと次のようになります。
年収1,816万円 - 【所得税399万円 + 住民税169万円 + 社会保険料112万円 + 事業税76万円 + 消費税67万円】
手取り年収 = 993万円(手取り率53%)
つまり、勤務医の平均年収1,488万円と同額の手取りを得る為には開業後1,816万円の年収が必要となります。
今回ご紹介した例は一定条件での概算ではあり、この記事をお読みいただいた先生方のご家族構成やお住まいの地域などの諸条件によって異なります。 |