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コンシェルジュ 坂下 信也

リスクマネジメント・ラボラトリー

坂下 信也

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている坂下 信也です。

2019年4月から始まりました「働き方改革」の影響もあり、さまざまな職場において働く環境の整備がなされています。 先生方の職場においても残業の制限や有給休暇の管理等、以前よりも細かな対応を迫られているところもあるかと思います。

しかし、働き方改革はまだまだ続きます。「非正規労働者への不合理な待遇の差の禁止」、いわゆる同一労働同一賃金の導入が、職員数100人以上の医療機関では今年の4月から施行開始、100人未満の医療機関では2021年4月より施行が開始されるなど、使用者側(雇う側)も労働者側も働く環境に関係する法律をしっかりと知っておく必要が出てきています。

そこで今回は基本の「基」である労働基準法の重要なポイントについて隔月全6回にわたりお伝えしていきます。

第1回は、働き始めの最初に交わす労働契約の締結について考えてみます。

それでは、どうぞ。

【1から学ぶ労働基準法】
第1回 労働契約の締結

【1から学ぶ労働基準法】

第1回 労働契約の締結

■ 「働く・働かす」も立派な契約

「○○病院で働きたい」と思い、履歴書を送り、面接が行われ、「じゃあ、〇月〇日から出勤してね。」と日常的に行われていることですが、この時点で雇用契約が成立したということになります。

民法上、「契約」とは相対する当事者の合意によって成立する法律行為と言われ、合意があった時点でその行為は法的拘束力を持ちます。

 

■ 「雇用契約書」と「労働条件通知書」の違い

どういう内容で、いつこの契約が交わされたのか証明するものとして、「契約書」があり、売買契約であれば「売買契約書」、賃貸借契約であれば「賃貸借契約書」というように雇用契約に関しては、「雇用契約書」がその契約内容を証明するものとなります。

それでは、雇用契約によって「雇用契約書」は必ず必要かというところですが、結論から申し上げますと「不要」となります。 上記で説明しましたように、あくまでもお互いの合意によって契約が成立しますので、契約書の整備までは契約成立の要件としていないからです。

一方で労働基準法第15条によって、使用者(雇う側)は、労働者に対して、書面で図に示す労働条件を明示しなければならないと規定されており、人を雇う際には雇用条件が記載された書類を作成する必要があります。

これを一般的には「労働条件通知書」といいます。 「雇用契約書」は民法の契約関係を証明するもの、「労働条件通知書」は労働基準法上、書面で提示しなければならない内容を記載したものと言えます。

図 労働条件の明示義務事項
労働条件の明示義務事項

 

■ 「雇用契約書」と「労働条件通知書」の関係

昇給について以外の絶対的明示事項を記載した労働条件通知書を作成し、労働者に提示すれば労働基準法上はクリアしますが、労働問題を起こすリスクを考えた場合はそれでは不十分です。

労働関係で問題になるきっかけは些細なことが大多数ですので、労働条件の細部まで記載し、また記載しきれない場合は、就業規則を添付・説明するなどして、お互いの認識のズレを少なくすることが労働問題を起こさない秘訣になります。

また、労働条件通知書が使用者側からの一方的な通知に対して、絶対的明示事項をはじめ、十分な労働条件の記載がなされた雇用契約書を作成し、両者の署名捺印をすることによってきちんとした雇用契約がなされたという証明にもなりますので、労働問題のリスクはかなり減ると考えられます。

 

■ 明示された労働条件が事実と相違する場合

労働の合意があったことで契約が成立しますが、「勤務時間が提示された内容と違った」、「賃金が提示された額よりも少なかった」など、契約と事実が異なるケースもあり得ます。

その場合、労働者は即時に労働契約を解除することができ、また解除によって使用者側に損害が生じたとしても、労働者には賠償の義務は生じません。

なお、労働者がこの即時解除権を使わずに、明示された労働条件の要求をし、使用者側がこれに応じないときは、民法415条によって損害賠償を請求することもできます。

コンシェルジュ 坂下 信也

いかがでしたでしょうか?

労働者の離職理由が、「入社する前にイメージしていた仕事と違った!」ということは多くあります。

その原因として、雇い入れ時にしっかりとした労働条件の明示・説明と労働者側の理解ができておらず、入社前後のイメージの乖離が発生しているケースが多いような気がします。

その改善策の一つとして、内定から就業開始日までの間に数回の面談や職場見学を行うことで労働者も職場の雰囲気や同僚の人柄も知ることになり、上記のようなイメージの乖離も防ぐことができると思いますので、内定から採用までの一連の過程を一度見直されるのもいいかもしれませんね。

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