■ 医療法人社団の運営機関
医療法 第三節 機関 第一款 機関の設置 第四十六条の二に「社団たる医療法人は、社員総会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。」とされており、社員、理事、監事を必ず置かなければなりません。
■ 基金型医療法人の最高意思決定機関
基金型医療法人の最高意思決定機関にあたるのが、社員総会です。 社員総会を構成するのが社員になります。 基金型医療法人で言う社員は、従業員とは異なります。 一般法人の株主が、基金型医療法人の社員にあたると言われていますが、基金型医療法人の社員は、一般法人の株主と大きく異なる点がありますのでご注意ください。
■ 社員と社員総会の議決権
社員は、社員総会という合議体の一員なので、原則として3人以上必要です。 医療法人の行為は、全て法令等、定款、社員総会の決定に拘束され、理事長、理事が独断で決定することは許されていません。 日常の業務、金銭出納等については、社員総会等の委任を受けているものと見なせますが、一定の規模を超える新たな義務の負担(借入金、改修工事、高価な物品の購入で予算に計上されていないもの等)については、必ず、社員総会の議決を経なければなりません。
■ 理事を選任できるのは社員
医療法 第四十六条の五 2に「社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によって選任する。」とあり、理事を選任するのは社員総会で、理事長を決める理事会、理事の選任も社員総会で決められます。
■ 社員総会の議決は1人一票で採決
一般法人の株主総会では、議決権を有する株式の場合、出資した株式数に応じて議決権を有しますので、株式を多く持つ株主の意思が株主総会の議決に影響します。 基金型医療法人の社員総会は多くの資金を拠出している社員も一票になり、1円も拠出していない社員も一票を投票できることになります。 つまり、全ての基金を院長先生が基金型医療法人に拠出していても、他の社員の総意で決議されることになります。 社員選任の際は、院長先生の意思疎通ができる身近な方を多く社員にされるのがお勧めです。
■ 理事長、理事、監事に役員報酬は支払えても、社員に配当金は支払えません
医療法 第五十四条に「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない。」と決められています。 基金型医療法人では社員として院長先生が拠出した基金以上の金額は、配当金になるので、社員としての院長先生に支払うことはできません。 理事長、理事としての役員報酬などでは支払うことはできますので、基金型医療法人の役員報酬を有効活用する必要があります。 個人事業で開業している院長先生が基金型医療法人を設立される場合、多くの院長先生が、ご自身の所得税・住民税を減らすことを期待されて設立されています。 残念ながら基金型医療法人は、自動的に税金対策をしてくれる「システム」では無く、ご自身で医療法人を活用されて所得税・住民税を減らす「ツール」なので、医療法人の仕組みを活用されなければ院長先生の所得税・住民税を減らすことはできません。 個別の状況によって異なりますが、院長先生の所得税・住民税を減らすためには、
- 今まで個人で負担していたものを合法的に医療法人でできる限り多く負担してもらう。
- 医療法人の内部留保をする。
- 理事長・理事の役員報酬(給与の支払い)金額などを工夫する。
などの対策が必要です。
■ 院長先生とご家族の幸せな老後資産作りと相続・事業承継問題の解決を
基金型医療法人を設立する際には、院長先生の所得税・住民税を減らすことに加え考えなければならないのが、院長先生とご家族の幸せな老後資産作りと相続・事業承継の問題です。 院長先生ご自身の未来のビジョンを描き、いくつかの想定パターンを作られ、それに向かって医療法人の経営、院長先生ご家族の財産作りをされるのがお勧めです。 想定パターンとは、
- 分院や介護老人保健施設などのサテライトを積極的に作りたい。
- お子様が事業継承するための準備を整えたい。
- 多くの勤務医の方を雇用して、2診、3診で診療し、地域医療に貢献したい。
- 同じ志を持つ医師に医療法人を買い取ってもらい地域医療を継承して欲しい。
- 診療患者人数を減らしても、自身の収入を減らさないようにしたい。
- 午前診療、午後休診にしても、自身の収入は減らさないようにしたい。
- 診療日を週3日で、ゴルフ三昧をしていても、自身の収入を減らさないようにしたい。
- 手術件数を減らしても、自身の収入を減らさないようにしたい。
- 相続税を減らしたい。
これ以外にも院長先生が望まれる想定パターンはいくつもあると思います。 院長先生の未来のビジョン、想定パターンによって経営や、財産作りの方法が変わってきます。 院長先生が「ビジョンを描くこと」と「基金型医療法人の活用」で、院長先生とご家族の幸せな老後資産作りや相続・事業承継に有効に使える可能性が高まります。
■ まとめ
- 社員の人数と、「社員を誰にするのか?」が、将来の医療法人運営に大きく影響します。
- 基金型医療法人は、社員に対して配当できません。
- 基金型医療法人は「ツール」なので、医療法人を活用できなければ院長先生の所得税・住民税を減らすことはできません。
- ビジョンを描き、基金型医療法人を活用することで、院長先生とご家族の幸せな老後資産作りと相続・事業承継問題の解決ができる可能性が高くなります。
|