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m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの米田です。

「開業して1度も“人”に関しての悩みがないクリニックは、はたしてあるのだろうか?」というぐらい医療機関とクリニックの“人”の問題は多いと感じられます。

今回から3回に亘って、人事マネジメントメソッドについてお伝えしてまいります。 インタビュアーは税理士法人エイアール税理士事務所 代表社員 原 知子税理士です。

これまでに200件以上先生方と一緒に開業に向け、開業場所の選定を始めさまざまなご支援をしてきました。 グループには社会保険労務士事務所もあり、経営から人の問題まで幅広く対応し、医療経営に関する問題解決など幅広く活躍中です。

豊富な経験に基づくアドバイスは多くの医療機関を魅了しております。 それでは、原税理士お願いします。

院長、院長夫人が知って得する人事マネジメントメソッド! 第1回
ヴィクティムマネジメントメソッド

院長、院長夫人が知って得する
人事マネジメントメソッド! 第1回

ヴィクティムマネジメントメソッド


こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。 今回よりクリニックの人事マネジメントメソッドについてお伝えしたいと思います。


ヴィクティムマネジメントのすすめ(パート1)
~ リーダー、スタッフのバーンアウトを予防できる承認スキル ~


■ 「ヴィクティム」という言葉はご存知ですか?

ヴィクティムとは、「被害者意識・ネガティブな考え」という意味です。 一般的には、ネガティブな発言や被害者意識を持つことはリーダーとして失格と言われています。

よくあるリーダー研修、管理者研修などでは、いつもポジティブな考えを持ち、自分の仕事に責任を持つという自責意識を醸成する教育をしています。

確かに、組織に属している部長、マネージャー、課長と言われるリーダーには、ポジティブな考えを持ち、自分の仕事(結果及び行動)に責任を持つという自立した意識・行動をとることが当然求められます。

しかしながら、ヴィクティムに囚われネガティブに傾いているスタッフに対して「いくらポジティブな思考をするように」と当たり前のアドバイスをしたところで、状況は変わることはありません。

なぜなら、過去に怒りやわだかまりが積み重なったことがヴィクティムに囚われる原因になっているので、この怒りやわだかまりを解放しない限りポジティブな考えで一歩を踏み出すことができません。

もし、ポジティブな考えで一歩を踏み出させたとしても、時限爆弾のように必ず爆発します。 爆発した後では、そのスタッフを復帰させるのは時間もパワーも必要になり極めて困難です。

そうなる前に、まず院長先生は、マネージャーやリーダーとなっているスタッフのヴィクティムの兆候を知ることがポイントとなります。

ヴィクティムの兆候を知るために、次のチェックリストを活用していただくことをお勧めしております。


■ ヴィクティムの兆候を知るチェックリスト


  1. 部下や他人を責めてばかりいる
  2. 課題について話し合うとき、できないことにばかり目を向ける
  3. 他人の動向をさりげなくうかがっている
  4. 自分に責任のある事柄を確かめようとしない
  5. 自分にとって一番つらい課題に向き合っていない
  6. よく防衛体制をとっている
  7. 自分では変えられないことについて話すことが多い
  8. 上司、同僚、部下の批判にかなりの時間とエネルギーを費やしている
  9. 誰かに利用された一件を何度も口にする
  10. 世の中を悲観的に見ている

以上、10個のチェックリストのうち、5個以上当てはまる箇所があればそのスタッフはすでにヴィクティム兆候にあると言えます。


■ ヴィクティム兆候にあるスタッフにどのように対応していけば良いのでしょうか?

結論から言いますと、ヴィクティム傾向にあるスタッフの怒りとわだかまりを解放させるためのアクションを起こすことです。

そのアクションとは、承認の実践と個別面談(レビュー)の機会を日常業務に組み込んでいくことと定義させてください。

今からお伝えすることは、我々のこれまでのコーチングやコンサルティングの現場で成果を上げたヴィクティムマネジメントメソッドです。 今回は特別にメソッドの一部を公開します。

このメソッドはステップ0~3からなります。 本日は、ステップ01を紹介いたします。


■ ステップ0: ヴィクティム兆候にある職員を特定する

さきほど紹介したチェックリストを使って特定するのも良し、他のスタッフから確認するのも良し。 とにかくヴィクティム兆候に囚われネガティブな行動を起こしているスタッフを特定することです。


■ ステップ1: ステップバイステップで心からの承認を行う

「心からの承認? なんだ、そんなことか。」と思われる方も多いと思いますが、ほとんどの経営者はできていないと感じます。

「承認をしましょう。」と伝えると、急にわざとらしく近寄り、褒める方が結構多いのですが、不自然な承認は、かえって逆効果になるケースがあります。

承認のポイントは心から行うことと、さりげなく自然に承認のレベルを上げていくということです。


■ 「承認のレベルを上げるって?」 どういうことでしょうか。

それは、承認のレベルを次の順番で区別して使うことです。 「存在承認」 → 「行為承認」 → 「結果承認」という様にヴィクティムに傾いているスタッフに対し、ヴィクティム度合いに応じて使い分けることが大切です。

1. 存在承認
「存在承認」とは、その人の存在そのものを承認することです。

具体的な行為としては、「あいさつする」、「会釈する」、「名前を呼ぶ」、「相手を見る」、「呼ばれたら顔をそちらに向ける」、「うなずく」、「同意する」、「相談をする」・・・などです。

いずれも当たり前と思われるかも知れませんが、できているという院長先生、院長夫人の方は極めて少ないように感じます。 「知っている」と「できている」とは違いますよね。

このメールマガジンをお読みの院長先生はスタッフの存在承認をしておられますでしょうか? これから、部下やスタッフに対して存在承認をしていきたい方には、次の言葉がけをするだけでも効果的です。

  • 「○○さん。 おはようございます(名前を呼んで)。」
  • 「○○さん。 お疲れさまでした(名前を呼んで)。」
  • 「いってらっしゃい!(顔をその人に向けて)」

ぜひ、実践してみてください。

この言葉がけを続けるだけでもヴィクティムに囚われているリーダーやスタッフが変化してきます。

2. 行為承認
「行為承認」とは、スタッフが望ましい行動をしたときに承認するということです。 すぐに結果が出なくても結果を出すために必要な行動そのものに対して「よくやっているね。」「会社に早く来ているね。」と、声かけするのが「行為承認」なんです。

具体的な行為としては、「状況・事実を伝える」、「ねぎらう」、「感謝の言葉をかける」、「拍手する」、「良い評判を伝える」、「前にその人が話した発言を覚えている」・・・などです。

行為承認するのは、その対象者をよく観察していないとできません。 まずは、存在承認を行いながら、その対象者を注意深く観察するということが大切です。

3. 「結果承認」
「結果承認」とは、結果に対して承認することです。 例として、「売上目標達成」、「新規受注を達成に対して表彰される」、「インセンティブが出る」・・・などです。

具体的な行為として、「表彰する」、「賞与の額を上げる」、「昇進・昇格する」、「報奨金を出す」、「MVP賞を出す」・・・などです。

結果承認の話をすると、よく院長先生からこんな質問があります。 「具体的な成果が出てないから苦労してるんだよ。 そんな職員にも、こじつけるようにして、結果承認しないといけないの?」

私は、いつも次のようにお伝えしています。 「結果が出ていないなら、こじつけるように結果承認をするのは逆効果です。 承認に値する行為に対して、ねぎらう、承認していくことが基本です。

結果が出ていないスタッフにも、その人の存在自体はあるわけですから、「存在承認」はできるはずです。 そして、スタッフのちょっとした行いに対して「行為承認」を行い、結果が出れば「結果承認」を行うことこそが、ステップバイステップでさりげなく自然に承認を行うことになります。

ぜひ、今日から3つの承認(存在承認、行為承認、結果承認)の使い分けを意識してみてください。 スタッフとの関係が驚くほど変わりますよ!

m3コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

勤務医時代には考えもしなかった「人事マネジメント」。

スタッフ1人1人に心もあれば感情もあるので、先生の思い通りにはなかなかいかないものだと感じております。

ヴィクティムマネジメントメソッドを意識してみてはいかがでしょうか。

次回はスタッフの行動を変える「個別面談(個別レビュー)の方法」についてお伝えしたいと思います。