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クリニック開業時の「しまった」事例 6/6回目

資金調達と資金繰り

m3コンシェルジュ 佐久間 洋

リスクマネジメント・ラボラトリー

佐久間 洋

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの佐久間です。 今回は「クリニック開業時の『しまった』事例」の最終回をお届けします。

執筆は「TOMA税理士法人」のヘルスケア事業部の方々にお願いしました。

TOMA税理士法人のヘルスケア事業部は「医療・介護の経営支援」に特化した部署を設けて25年以上、病院・医院、施設を取り巻くあらゆる問題に対応した経営&税務のコンサルティングを提供しております。

それでは、どうぞ。

皆さま、こんにちは。 TOMA税理士法人ヘルスケア事業部です。 今回は、クリニック開業時の「しまった」事例第6回目として「資金調達と資金繰り」にまつわる事例をお伝えいたします。

開業には多額の資金を必要とします。 テナント開業か自己所有物件による開業か、医療機器を自己資金で取得するかリースで取得するか、などで必要資金は大きく異なりますが、テナント開業の内科クリニックの場合、5,000~7,000万円位になるケースが多いようです。

大きな支出の例としては内装工事費や什器・医療機器、賃貸物件の保証金などがあげられます。 それ以外にも、広告宣伝費や求人費などにもまとまったお金が必要です。

この必要資金の量に対し、手持ち資金と借り入れ資金のバランスが悪く、思いもよらず早期に資金不足に陥るケースがあります。 「しまった!」と思っても資金不足に陥ってからの資金調達は難しくなりますので注意が必要です。

■ 資金繰り計画

1. 資金繰り計画の注意点とは?
開業の際には資金繰り計画の作成がかかせません。 将来的に資金がどのように動くか予測し、結果としてどれ位の資金が必要なのか予測します。

1日あたりの外来患者数の見込みや診療科毎の平均診療単価などから収入予測を立て、診療材料費や薬品費、人件費や固定経費など支出見込み額を差し引いて損益の予測を立てます。

この損益から借入金の返済や生活費を控除して、全体的な資金繰りを計画します。 特に開業2ヶ月は保険診療報酬の入金がありませんので、手持ち資金から経費全般の支払いが必要になりますので、注意が必要です。

現実的には診療報酬の入金額が予測の通りにいかないこともありますので、半年分以上の運転資金は見込んでおいた方が良いです。 現在、都市部で開業する内科クリニックの場合、軌道に乗るまで1年以上かかることも珍しくないため、資金繰りを考えて手持ち資金を多めに残しておくことが必要です。

2. 借入金の返済
資金繰りに大きな影響を及ぼすのが、借入金の返済です。 開業当初の元金返済据え置き期間は良いのですが、据え置き期間が過ぎてから資金繰りが急に厳しくなるケースをよく見かけます。

据え置き期間中に医院が軌道に乗れば良いですが、思うように患者数が伸びないことも想定して、返済期間や月々の返済金額を設定しておくことも大切です。

3. 生活費の設定
開業の資金繰り計画には、院長先生自身の生活費の設定も忘れないようにしましょう。 もちろん、事業上の経費になる訳ではないですが、事業上生まれた資金から生活費を捻出することになるので、生活費の設定はかかせません。

住宅ローンや子供の教育費なども考慮し、ライフステージに合わせて金額を設定します。

4. 開業形態による違い
必要資金を予測する際、大きな違いとなるのがテナント開業か戸建て開業かという点です。

A. テナント開業

  • メリット
    戸建て開業に比べて、比較的初期資金が少なく、駅前などの良い物件を探しやすい
  • デメリット
    家賃の値上げや賃貸契約内容の変更などのリスクがある


B. 戸建て開業

  • メリット
    内装や空間利用などの自由度が高い
  • デメリット
    テナント開業に比べ、多額の初期資金が必要になる

■ 資金調達

1. 調達先の検討
開業に際して資金繰り計画が出来たら、資金調達の検討に入ります。 調達先は銀行、信用金庫、日本政策金融公庫などが考えられます。 利率が低いことが多い日本政策金融公庫や、開業向けの商品を扱う銀行などで借り入れをするケースが多いようです。

どの調達先を選ぶにしても、貸付限度額や金利、返済期間など現状に照らし合わせた条件設定が必要です。

2. 融資を受けるポイント
金融機関の審査のポイントは、事業計画や診療調査の精度、院長の人柄や専門性、医院としての成長性や特徴、競合医院と比較した時の優位性など様々です。

いずれにしても、院長自身が事業計画をよく理解していることが大切です。

■ まとめ

事前の計画の差が開業後に大きな差となって現れ、資金繰りが厳しい状況では先生の診療にも影響が出てしまいます。 資金繰り計画と資金調達には多くの時間をかけて、慎重に検討することが必要です。

m3コンシェルジュ 佐久間 洋

いかがでしたでしょうか?

開業後「しまった!」ということにならないように、資金計画をしっかりと立てたいものです。

開業後も含めてしっかりサポートが受けられる顧問税理士をさがしてみるのが良いかもしれません。


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