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m3コンシェルジュ 伊賀 佐和

リスクマネジメント・ラボラトリー

伊賀 佐和

業者やコンサルタントに「お任せの開業」では、勤務医時代の収入さえ確保できないケースや、3年で所得2,000万円を超えることが難しくなっています。 ますますクリニック経営において「お金を残すこと」を強く意識すべき時代がやって参りました。

このような状況下では、開業して成功するためにはどのような点に注意すべきか、つまり「お金を残すクリニック経営をいかに実現するか」が大切です。

今回は「クリニック開業塾、東京 2018夏」の講師である、30年もの間、医業開業・経営の支援に携わってきた医業経営コンサルタント、株式会社宋和メディカルオフィス 代表取締役 原田 宋記氏に執筆をお願いいたしました。

【目指すべきこれからの開業スタイル】 第2回
クリニック経営「お金を残す」意識とは!

目指すべきこれからの開業スタイル 第2回

クリニック経営「お金を残す」意識とは!

■ 事業計画のミスリードに要注意

これまでの開業は予算枠内ではなく費用を足していく「積み上げ式」が中心です。 推計患者数から逆算した設備投資額という考え方が少ないため、開業資金総額が膨らんでいくことが多くなります。

そもそも、開業時に見受けられる多くの事業計画というのは金融機関からスムーズに借入するために作成されているので実態と異なります。 業者やコンサルタントのリード次第で、安易に借入できることが油断を生んでしまい、「成功できる」「お金が稼げる」と考えがちなのです。

また、開業時の業者指定は「利益確保」業者同士の紹介で利益を回し合う構造も少なくありません。 その結果、資金総額が膨らむことから、所得が上がっても元金返済が多ければ、お金が残りにくいという原因にもなっています。

また患者数が計画通りに増えなければ1年目から2年目に資金繰りがさらに悪化し、改善するのに時間もかかります。 ですから、開業資金総額をどれだけ抑えることができるかで、同じ患者数でも手元に残るお金が変わってきます。

事業計画はミスリードにならないよう推計患者数に応じた予算を設けて作成するような注意が必要ということです。

 

■ 資金繰りのコントロールでお金を貯める

順調に開業、2年目に黒字化し3年目に勤務医時代の給与を超える所得になると、成功した錯覚に陥ることがあります。

なぜなら通帳にお金が貯まり始めると使えるお金と勘違いしてしまいがちだからです。 運転資金などのために借入した資金の上に事業が成り立っていることを忘れてしまうからです。

資金繰りは容易ではありません。 把握できるのは黒字になってから後、3年はかかります。 費用は先に出ていくが収入は2ヶ月後。 「黒字 = お金が残る」訳ではありません。

特に年に30%以上収入が増えるときは要注意です。 税金を含めたいろんな支払いが一気に増えてくるからです。 できる限り残高が多く残るような工夫が必要になってきます。

大きな所得額に惑わされて調子に乗ってお金を使ってしまうようになれば、税金の支払いのためにお金を借りるようなこともちらほら耳にします。 そうなれば当然、お金は貯まらないです。

資金繰りひとつでお金の貯まり方が変わることを理解して、お金をコントロールできる習慣を付けていただきたいです。

 

■ 借入金と預金のバランスを考えてお金を使う

お金が貯まるには当然、期間が必要ですが、2,000万を超える黒字になるには最低5年はかかります。

しかし、借入金返済が多ければ貯まらず、お金が回っているだけになることが多いです。 お金の貯まらない黒字でも業者は「資産形成」「節税」という甘い言葉で勧誘してきます。

事業資産がマイナスにもかかわらず運用してどうにか資産を増やそうと考えてしまいがちです。 事業と関係ない投資は感覚を麻痺させることや、医師だからいい商品や物件が持ち込まれると勘違いすることも少なくありません。

そのため、新たに借入金を増やすケースも出てくる訳です。 お金を使うには、借入金と預金を考え、使える時期があることを知っておかなければなりません。

m3コンシェルジュ 伊賀 佐和

いかがでしたでしょうか?

「お金が残る経営」とは借入金を除く自己の流動資本(クリニックに残るお金)を増やしていくということですが、お金には他人のお金(借入金)と事業の利益に伴って出ていくお金(税金・費用)があることを強く意識して、計画的に資産形成をしていくことが必要ということですよね。