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クリニック経営を数値で読み解く

~ 損益分岐点を知る ~

m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリー大阪第二支店の米田です。 今回は「クリニック経営を数値で読み解く ~ 損益分岐点を知る ~ 」についてお伝えします。

開業直後から、右肩上がりで医療収益を伸ばしていけるとは限りません。 ほとんどの開業直後の先生は、しばらくの期間マイナス経営が続くのは必至です。 そのため、集患対策に力を入れ、ホームページ開設、野立て看板などの広告に余念がありません。

しかし、それらにも費用が掛かります。 開業資金のほとんどは借入金でしょうから、毎月の返済・人件費・リース料や家賃など、待ったなしで襲ってきます。 集患対策や、先生や奥様の地域への認知活動もあり、ある日から医院経営が軌道に乗っていきます。 この、軌道に乗った時、いわゆる「損益分岐点」が医院経営にとって大切なキーワードになります。

そのあたりを、森田税理士にインタビューしてまいりました。

森田税理士は、新規開業はもちろん、事業継承など多くの実績と経験があります。 実情を踏まえながら、わかりやすくお話をいただきます。

【米田】
開業後、「いつになったらマイナス経営から脱出できるのか。」と、よく溜め息をついておられる先生方を見かけるのですが、このマイナスからプラスに転じる時、いわゆる「損益分岐点」について、教えてください。

【森田 税理士】
損益分岐点とは、医業収益額と費用(経費)額が等しくなる点、すなわち利益も損失も生じない医業収益高の「点」をいいます。 ようするに、医業収益が損益分岐点以上であれば利益(プラス)が生じ、それ以下であれば損失(マイナス)が生じていることになります。

【米田】
では、少しでもプラス経営にするのであれば、意図的に費用(経費)を下げることも必要なのでしょうか。

【森田 税理士】
費用(経費)を少しでも抑えることができるのであれば、それに越したことはありません。 現実、最近開業される先生は、ローコスト開業を意識されていますから、こちらからアドバイスするに至らないケースが多いですし、事業継承であれば、医療器械などの設備やリフォームという大掛かりにならなければ、さほど費用は掛からないです。

ただ、第三者継承の場合、クリニックを買い取る資金が必要となります。 売り手側は少しでも高く売却を望んでいますから、そのあたりは気をつけた方がいいです。

【米田】
それでも、最低限に掛かる費用(経費)をそれ以上に抑えるのは現実的には難しいですよね。

【森田 税理士】
そうですね。 ただ、費用(経費)を抑えるのも重要ですが、まずは、損益分岐点を知ることで計画的な経営感を持つことができますので、損益分岐点についてお伝えします。

まず費用(経費)は変動費と固定費に分解しなければなりません。



次に重要なのが「限界利益」という言葉です。



すなわち、損益分岐点は、損益分岐点医業収益と現在の医業収益の比率を求めているものであり、(100 - 損益分岐点率)が経営安全率を示していることになります。

【米田】
医業収益から経費(費用)を単純に引いたものが利益ではなく、変動費と固定費の二つに区分し求めなければならないのですね。 では、あえて損益分岐点を意図的に低くする方法はあるのでしょうか。

【森田 税理士】
そうですね、例えば現在ご盛況中の医院を継承すると仮定しましょう。 この医院の収益構造をどのように判断すれば良いかというと、

1. 医業収益は他の病院に比べ低くないか(平均値を知る)
2. 損益分岐点が低すぎないか、高すぎないか

この「1」と「2」の両面から考えなければなりません。

「1」は、医師1人当たり医業収益などの比較によって判断できます。 「2」は、限界利益率(変動費率)と固定費額に分けて検討する必要があります。 しかし、この限界利益率を見るには決算書を読み解く力が必要になります。

ここでは非常に難しいので触れませんが、第三者継承や親族間継承を問わず、顧問税理士だけの話ではなく、医業に精通した他の税理士に相談された方がいいです。 患者さんでもセカンドオピニオンが当然の時代です。

【米田】
盛業されているからといって、今後も同じように患者さんが来院していただけるとは限りませんし、利益が出ているとも限りません。 損益分岐点を知り、決算書を読み解く。

難しいのであれば、医業に精通した税理士に相談する。 このあたりは非常に重要だと感じました。 これから開業される先生の生活が成り立たなくなっては本末転倒ですしね。

【森田 税理士】
そのとおりですね。 事業継承の場合は、医院の決算状況を把握し、将来展望、未来予測が大切です。

新規開業の場合は、開業資金にどれだけ自己資金を注ぎこむことが可能なのか、どれだけ借り入れをしても良いのかなど、少々厳しい事業計画書を作成し損益分岐点を出してみる、なども良いでしょう。 慎重に考えていただきたいと感じます。

【米田】
森田税理士、ありがとうございました。

m3コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

一つ一つ決断するのは先生方ご自身ですが、それを先生方ご自身で正確に判断するための物差しを、中立な立場かつ必要なタイミングでアドバイスしてくれる専門家選びも重要事項といえるのではないでしょうか。

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