m3QOL君m3.com QOL君 メルマガ

m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの米田です。

前回は「開業医の悩みを知り、その情報を活かす」という内容で、将来に起こる人口減少からいかに選ばれる医院になるかをお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

今回は、3つの経営資源である「ヒト」「モノ」「カネ」に焦点を当てて、お伝えします。

医業に関わらず、どの事業(企業)でも、良質な経営資源をどれだけ確保できるかによって、競争力は決まると言われています。 経営資源とは事業(企業)を経営していく上で役に立つ多様な要素や能力のことを指します。

最近では、3つの経営資源に「情報」が加わり、4つの経営資源との言葉が定着しているようにも感じます。

では、この3つの経営資源について、開業時に知っていていただきたい内容をいくつかピックアップしお伝えします。

著者はm3.comより大阪を中心に約250件の病医院の顧問先をお持ちであり、開業、事業継承に多くの実績がある河村会計事務所、河村好夫税理士にお願いしています。

それでは、どうぞ。

失敗だらけの開業方法
3つの経営資源「ヒト」「モノ」「カネ」
 

失敗だらけの開業方法

3つの経営資源「ヒト」「モノ」「カネ」

■ ヒトに関する情報

開業時には、オープニングスタッフとして「ヒト」が必要です。

近年は、人手不足が深刻化しており、それは都市部、地方関係なく起こっている状況が見受けられます。 そのような中、開業時に求人広告を出しても応募がなかなか来ない、医療専門スタッフのみならず、受付医療事務の応募も予想以下の状況が続いて悩まれているドクターがいらっしゃいました。

そのような中、人材紹介会社から看護師の紹介を受けた時の話です。 まず送られてきたのが、本人を特定できない「キャリアシート」だけでした。 これを基に面接の可否を決めなければならず、また、面接時には仮契約の締結も必要とのことです。

契約書の内容

  • 紹介された人材を採用した場合の紹介手数料規定(年収の20%~30%)
  • 採用後、自己都合退職時の返金規定

例えは、年収400万の看護師を採用した場合、手数料として100万円を支払った後、1か月後に自己都合退職をした場合60万円(紹介手数料の60%)しか戻ってこない内容でした。

人材が集まらない場合に、多くの先生は人材紹介会社を利用するケースが見受けられます。 開業後の安定期に、スタッフの出産・育児休暇や介護休暇のような期間限定での人材紹介会社を利用するのは良いと考えます。

しかし、オープニングスタッフが不足している状況では、人材紹介会社から足元に付け込まれた営業をされ、いわゆる質の悪い人材を紹介されるケースもあります。 このようなことに見舞われないよう、面接時に気になる点があれば本人の同意を得て、前の勤務先に働きぶりなどを確認することをお勧めします。

 

■ モノに関する情報

現在では、開業時に電子カルテの導入検討は必須です。 ただ、電子カルテは決して安い買い物でなく、高額であり、開業資金のコストバランスにも重要な位置にあります。

そこで初期投資を抑えるために、価格重視で選ぶドクターも多いと思います。 しかし、価格も大切ですが、そのメーカーが得意としている科目に合致しているか、サービスの「質」は、欲しいと思っている内容に値するかなど、注意すべき点は多くあります。

例えば、ある開業をされた耳鼻咽喉科のドクターが、価格重視で電子カルテの導入を決めました。 後でわかったことですが、そのメーカーは内科が中心で、耳鼻咽喉科の実績はほとんどなかったようです。

そのため、開業日が近づいても電子カルテのセット組作業がなかなか進みません。 また、耳鼻咽喉科の保険診療に詳しいインストラクターも少なかったため、電子カルテの研修日程も決まらないなど、開業前に色々な問題がありました。

開業後は想像以上の返戻指摘を受け、トラブルが多くありドクターも疲れ果てていたことがあります。 電子カルテの選定時には価格を重視する気持ちは否めません。 しかし、保険報酬の請求にも直結し、厚生局の保険指導が入ることもあります。 メーカーが得意としている診療科目、サービスやアフターフォロー等をしっかり確認して、導入を決めていただきたいと思います。

 

■ カネに関する情報

銀行からの融資は、「借金」だと重く受け止めている反面、リースは「借りている」との気軽なイメージを持たれているドクターがいらっしゃいます。

これは大きな間違いで、どちらも「借金」であり、しかも選択を間違えると、開業後の資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。 開業時には多額の資金が必要となります。

あるドクターの開業例ですが、理想の診療スタイルや診療所への思いが強く、相場よりも内装工事費や医療機器がテナント開業では高額の1億超となり(運転資金も含む)、自己資金を投入し8,000万の融資を受けようと考えました。

コンサルタントと相談した結果、医療機器4,000万を5年リースで行い、残り4,000万を銀行から15年の長期返済にて融資を受けることとなりました。

しかし、リースと融資の返済シミュレーションを見て、本当に返済していけるのか不安になり、私の所へ相談に来たというお話です。

やはり投資額が大きいのと、患者数が当初多くは見込めない、そのような中での返済とリースの支出額が大きく、資金繰りが開業後半年で悪化する予測になりました。

いまから、計画変更は難しい理由もありこのような提案をさせてもらいました。

対応策

  • 技術進歩が速く陳腐化しやすい機器を中心に短期リースのまま(1,000万)
  • その他は、銀行借り入れで長期返済に変更(3,000万)

これだけを行っただけで、リース料の支出が年間400万円程抑えられます。 銀行融資は増えてしまいますが、長期返済なので月々の返済計画としては、非常に楽になりました。

リースには、固定資産税や保険料などが含まれているため、事務負担の軽減が図れるメリットはあります。 しかし、資金繰りが悪化しては本末転倒になりかねません。

銀行融資に抵抗があるドクターであれば、開業後軌道に乗り始めてから、繰り上げ返済を積極的にされれば短期返済も可能ですから、是非無理のない返済計画を立てて欲しいです。

m3コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

開業時には色々な情報を収集し活動されることでしょう。 そのような中、先生と息の合う開業をお手伝いするパートナー探しも重要です。

ただ、どこかでボタンの掛け違いが起きてしまうような悲惨な状況も見受けられます。 そのようなことがないようにしていただきたいと願うばかりです。

大阪を中心に250程の病医院を顧問先としてあるからこそ見える「現在の開業医の悩み」を知っていただき、それを開業に役立てていければと思っております。


⇒ 河村会計事務所へのご相談はこちら