m3QOL君m3.com QOL君 メルマガ

m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

リスクマネジメント・ラボラトリー

宮地 孝郎

さまざまな媒体やセミナーの中でも特に皆さまのご関心の高い、開業された先生の体験談。 第一弾に続き、今回も「ある開業医の体験談」をお送りいたします。 それぞれ開業のプロセスは異なりますが、皆さまにとってのヒントが隠されているかも知れません。

執筆は医療機関を中心とした税理士業務に加え、クリニックの非常勤事務長としても活躍している税理士法人福岡中央会計の隈和宏 税理士に、実際に開業支援した事例の中でも特に印象深かった先生の体験談をお願いしました。

ある開業医の体験談 第二弾
先輩開業医は見た! 地域に求められる開業とは?

ある開業医の体験談 第二弾

先輩開業医は見た! 地域に求められる開業とは?

皆さま、こんにちは。 税理士法人福岡中央会計の隈です。 今回は、勤務医として成功の道を歩んでおられた先生をご紹介いたします。

Bクリニック 診療科目:整形外科 飯田先生(仮)51歳

飯田先生は開業2年目の先生です。 医学部を卒業して数年後にはアメリカの大学へ留学し、より深い研究をされていました。 日本に戻られてからは、いくつかの病院で勤務し、開業前は病院の副院長を務められていました。


1. 開業のきっかけ

身内の方で既に開業している先生がおられ、ご自身も当然のように開業へと向かわれました。 開業へは、年齢を考慮したタイミングで動き出されたのではないでしょうか。 また、副院長としての立場上、後任となる先生が組織に定着するまでは動きにくかったと言う話もお聞きました。


2. 業者さんはどのように選定したか

業者さんの選定からスケジューリングまで、薬局関係の方にお手伝いいただいていました。 医療機器については、勤務医時代からお付き合いのある業者さんに依頼されており、机や椅子などは患者さんから見えるものは少し高価なもの、患者さんから見えないものは量販店で安く購入されるなど、コストも意識しておられました。


3. 開業場所はどんな理由で決めたか

競合が少なく、高齢者が多い地域を重点的に探しておられました。 とはいえ、好立地の土地はなかなか見つからず半年ほど経った時でした。 市場には出回っていない土地情報を入手することができ、地主さんとの交渉ができるかもしれないと言うことで、診療圏調査や周辺視察をしてみたところ理想の立地でした。 交渉の結果、売却していただけることになりました。

実は地主さん自身も先生で、昔からある地域に愛されているクリニックの院長をしておられ、「地域に必要とされる医療を提供して欲しい。」と言うお考えもあられたようです。 また、交渉と平行して地主さんのクリニックの経営面や税務面の相談にまで話が広がり、私も土地購入に関して少しは貢献できたのではないかと思っております。

このように、地主さんとの強い繋がりを持つ方や、一歩踏み込んだ相談を持ち出されるような間柄の方が身近にいると、市場に出回らない貴重な土地情報を入手する機会が増えます。 先生の診療理念を明確に持つことも、今回のような理想の土地の購入に至ったのではないかと思います。


4. 診療圏調査の数字と実際の外来数との間に差はあったか

診療圏調査は予想通りの良い数字が出ていましたし、先生のご要望により事業計画は堅実路線で作っており、開業当初の患者数も事業計画通りでした。

開業から一年半経った今、診療圏調査の結果を大きく上回る患者数となりました。 実際には、リハビリの患者さんが想定より多いのにも関わらず、患者単価は事業計画より高くなりました。 また、金額ベースでは既に事業計画の3倍近い水準となっており、順調そのものと言えます。

土地の交渉や相談の際、地主さんや交渉に関わった方と話をする機会があり、地域の話もお聞きすることができたのですが、なんとその地域の既存の整形外科はあまり評判が良くないことが分かりました。 数字には表れない要素も成功のカギとなることを実感しました。


5. クリニックの告知はどのように取り組んでいたか

開業時にはクリニックのスタッフや関係業者の協力により、手作り感溢れる内覧会が行われ、高齢者をターゲットにしていることもあり、告知は新聞折り込みを中心に行われました。

ホームページも作成していますが、できるだけアナログな媒体にも力を入れられていました。 開業後に看板の増設をしましたが、患者数は順調に伸びているので直接効果があったのかどうかは不明です。


6. 開業時を振り返って今

開業地を探す際、別の土地の入札に負けることもありましたが、結果的に良い土地に出会えたと思っておられます。 開業から半年間は事業計画通りの患者数であっても、不安を感じられたようで、来院患者さんも多く、すぐに経営は安定したのですが、「内覧会を大々的に行うことでもっとスタートダッシュを効かせることができたのではないか?」と後悔されたそうです。

開業時から患者さんに優しく対応されておられ、今では優しい先生と言う口コミが広がっており、優しい先生を目当てに来られる患者さんも少なくないため、ますます優しさに磨きがかかっているそうです。


7. 今から開業する先生に伝えたいこと

開業を選ばれる先生は、やりたい医療をやるために開業を目指されることが多いのですが、順調に患者数を伸ばしている例を見ると、開業地で求められているかどうかが業績に大きく影響しています。

最新の機器に興味を示す患者さんもいれば、先生やスタッフの笑顔に癒されに来られる患者さんもいます。 どの患者層をターゲットにするかによって、技術なのか、人柄なのか、立地なのか、求められるものも違ってきます。

ご自身の技術やコミュニケーション能力を客観的に分析することも、成功へのヒントとなるのではないでしょうか。

m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

いかがでしたでしょうか?

一般的には遅い開業の飯田先生でしたが、円熟期でもあり経験とコミュニケーション能力の高さが評判の秘訣とも感じます。 積極的に理想の開業地を求め続けられたことも順調な経営の要因だったのでしょう。

さて2回に亘り、先輩開業医の体験談に触れてきました。 お二方に言えることは地域ニーズの高い場所で開業できたことが大きかったように思いますが、客観的に開業を分析できていることが経営を行っていく上で、重要な資質だと思います。

 

⇒ ご質問・ご相談はこちら