m3QOL君m3.com QOL君 メルマガ

m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている米田 弘司です。

クリニック開業 コロナ禍に学ぶ」の2回目は、「先輩開業医からのエール」です。

コロナ禍においての開業を非常にリスクと感じて、中止や延期を余儀なくされているのをよく聞きます。 それは、「開業計画書通りにいかない」といった不安を抱いているからではないでしょうか。

では、現在ご盛業中の先生は今をどのように乗り越えようとしているのでしょうか。 医療法人康心会(こうしんかい)の 谷口智康理事長にインタビューしてまいりました。 大阪府、兵庫県を中心に内視鏡クリニックを開業されており、現役のドクターでいらっしゃいます。

それでは、どうぞ。

オンライン開業塾2020秋
第2回クリニック開業 コロナ禍に学ぶ
「先輩開業医からのエール」

オンライン開業塾2020秋

第2回クリニック開業 コロナ禍に学ぶ
「先輩開業医からのエール」

【米田】
谷口先生は兵庫医科大学を2003年に卒業され、2011年開業、現在本院を含め4つのクリニックを経営されていらっしゃいますが、経営に関するノウハウやメソッドを数多く持ち合わせおられると思います。 開業を考えている先生方へアドバイスをお願いします。
 

【谷口先生】
私も、順風満帆に成功している訳ではなく、数多くのクリニックを開業、経営する中で、逆に人より多くの問題や失敗を経験し、それらを1つずつ解決し、乗り越えて今に至っております。

その経験を踏まえ、私は開業医としての日々の業務だけではなく、開業を考えておられる先生のサポートは当然、開業後のクリニックを軌道に乗せるための支援をいくつかのクリニックでお手伝いしています。

【米田】
開業準備や手続きが豊富なコンサルタントとは違い、同じドクターでないと理解できない、細かい部分もフォロー可能で心強く思います。 では、本題ですがコロナ禍において、谷口先生のクリニックはどのような状況でしょうか。
 

【谷口先生】
コロナの影響をもろに受けております。 正直、死活問題です。 開業される先生へのエールという以前に、今現在開業されている先生方でも私が知りえる限りでさえ、閉院、休院されるところをいくつも聞いています。

特に、整形外科、小児科、耳鼻咽喉科などはシビアな内容を耳にします。 内視鏡クリニックも検査数が激減し、存続が危ぶまれるクリニックも耳にしています。

【米田】
医療業界は、景気には左右されにくく、どちらかと言うと政策に左右されるとの話はよく聞きます。 未経験で先行きが見えない、新型コロナウイルスの影響は相当なものですね。
 

【谷口先生】
そのとおりです。 正直どのような先生でも、鳴かず飛ばずはあるにせよ、そう簡単に経営が傾くとは考えていませんでした。 ただ、今まで以上に、クリニック経営というものに危機感を持ち、努めていけば、クリニック開業は素晴らしいものであると私は信じて疑いません。

「勤務医と開業医は違う」、「経営者であることを自覚すること」などの内容を、先生自身、本当に細胞レベルで自覚し、理解し、行動することだと考えています。 そのためには、「先生は開業するにあたりプライドを捨ててください。

自分は賢くも、なんでもないです。 謙虚になり、足らぬところはしっかり知識のある人のサポートを受けて勉強してください。」と、いつも思っています。 失礼であればお許しください。

医師というのは正直賢いが、故に残念な人種だと思います。 皆さんそうだと思いますが、小学校の頃より比較的勉強は出来て、神童などと呼ばれたりして、その後医学部に入り、医師になり、医療知識と技術を競い鍛え生きてきているのです。

周りからはちやほやされ、一目置かれ、それがいつしか先生のプライドとして、自分の生き方として、厄介なものを形成してしまっているのです。 「自分は出来る、今までも成功してきた。 開業なんて自分にとっては問題ない」そのプライドこそが開業の足を引っ張り、失敗の原因となってしまいます。

【米田】
開業をお手伝いするにあたり、何人もの先生とお会いしてきました。 性格なのか、色々な考えをお持ちの先生がいらっしゃいます。 ただ、それらは不安の表れでもあるので、私は、まず信頼していただくことに注力しています。
 

【谷口先生】
開業を考えている先生は、「なにを準備していいか分からない」「人に聞いたりすると情報が漏れてしまい誰かにコントロールされてしまうのではないか」「コンサルタントに聞くと予想を超えた費用の請求がくるのではないか」「でも、何処に相談して、誰に聞けばいいのか。

適切なお金を払って契約すれば、クリニックは上手く開業、経営していけるのだろう、でもそもそも適切なお金っていくらなのか」等々、先に開業した先輩や同僚の言葉が、頭の中を駆け巡っているではないでしょうか。

そのようなことを思い、本を読んで知識を入れても、机上の空論、頭でっかちでプライドが高いだけになってしまします。 知識やプライドは大切ですが、分からないことはきちんと謙虚に色々な人に話を聞いて勉強し、これぞと思った人や会社と契約して、開業、経営に関して最善なサポートをもらうべきです。

「不安」や「疑問」が多く、「決断」「決定」が出来ないのは自分自身が無知であるからに他ならないのです。 私の経験で少し例を挙げてみましょう。

私に開業の相談に来た先生がいました。 頭の中はクリニックの内装をどうするのか、どのような医療機器を導入しようか夢と希望がいっぱいの先生でした。 言葉は悪いですが、「夢見る夢子ちゃん」タイプの開業失敗型先生です。

クリニックのゾーニングを拝見しましたが、私は愕然としました。 「この50坪で総合病院でもなさるのですか?」と、口に出したくなるひどい図面で、クリニックの業態には全く合致していませんでした。

開業時期も近づいておられましたので、すぐさまその点を指摘させていただきアドバイスしたのですが、「でもね、」「でもね、」の連発で私、谷口の指摘は聞き入れられず、結局先生の思い描いた設計で施行されそのまま開業されました。

当然ですが、私の意見を聞き入れていただけないので、その後のお手伝いはしませんでした。 開業後、利用頻度の低い医療器械があり、スタッフの同線もままならず、追いやられた感じのスタッフルームの狭さにとうとう不満が勃発。 私のところに再度相談に来られたケースがありました。

【米田】
ご自身のプランがあっていると言ってくれるイエスマンを探していたのでしょう。 このようなことを思い、今から開業を考えている先生方へエールをお願いします。
 

【谷口先生】
経営、人事、労務に関しても、失敗談は挙げれば枚挙にいとまがありません。

ぜひ先生方におかれましては、開業前に十分に時間を取って、知識、経験のあるところにきちんと相談され、プライドを捨て、自分は無知であると言い聞かし、しっかりと話を聞いて、必要と思ったところとはきちんと契約し(誰も無料奉仕ではやってくれませんよ)、立派なクリニック経営を目指していただきたいと思います。

そうすれば、今回のようなコロナ禍においても、きっと乗り越えられると確信しております。 先生方の開業したい気持ちが正しい方向に発揮されれば、必ず良いクリニックになると思います。

コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

今回は、コロナ禍における「先輩開業医からのエール」と題して、医療法人康心会 谷口智康理事長にインタビューしてまいりました。
https://yao-taniguchi.com/

開業医でありながら、ご自身の経験を活かし、開業のご相談やサポートもされているようで、頼もしい限りです。 また、そのようなノウハウなどをまとめた開業サポート本を「クリニック開業を成功させる7の法則」として出版予定です。