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コンシェルジュ 坂下 信也

リスクマネジメント・ラボラトリー

坂下 信也

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている坂下 信也です。 【1から学ぶ労働基準法】の第3回は「賃金」についてです。

賃金は労働者の生活の基盤となるものであり、一般的に労務(労働者の義務)の提供があったのちに賃金の支払い(使用者の義務)が行われるため、労働基準法上、細かくそして厳格に規定がなされています。

それでも賃金に対しての運用方法が事業所ごとに全く異なるので、労使間の争いは少なくありません。 また新型コロナウイルスの影響によって、休診や労働者を休ませる対応も出てきています。

そこで今回は賃金についての基本的な考え方、そして今回の新型コロナウイルス感染に関する賃金の対応について考えてみます。(前回の内容はこちら。)

【1から学ぶ労働基準法】
第3回 賃金

【1から学ぶ労働基準法】

第3回 賃金

■ 賃金とは

一般的に、賃金、給与、給料、手当など様々な呼び方をしますが、労働基準法上、「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」に該当するものは、「賃金」と呼びます。

毎月支払うものでなくとも、労働の対償としてみなされるもの、例えば、賞与、ボーナス、数か月の勤務成績などの評価として支払われる業績手当なども賃金と呼ぶことになります。

 

■ 労働基準法の「賃金」と健康保険法などの「報酬」の違い

労働基準法は「賃金」という言葉を使うのに対して、健康保険法、厚生年金保険法は「報酬」という言葉を使います。

労働基準法第11条
賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

健康保険法第3条5項
報酬とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのものをいう。

規定されている文言は、ほとんど同じなのですが、下記を理由として異なった扱いがなされます。

  1. 賃金は「労働の対償として使用者から労働者に支払われるもの(役員に支払われる役員報酬などは賃金ではない。)」。 報酬は「役員など労働者以外へ支払われるもの(役員報酬など)も含まれる」。
  2. 労働基準法は、賞与も賃金に含まれるが、健康保険法、厚生年金保険法は社会保険料の計算をするために、労働の対償として受けるものを報酬と賞与を区別している。
  3. 労働基準法の賃金は、金銭について規定されているものであるのに対して、健康保険法、厚生年金保険法の報酬は、通勤定期券、食事の提供など現物支給といわれるものも含まれている。

 

■ 賃金支払5原則

労働者にとって賃金は、毎日の生活に欠かせないものです。 よって、労働基準法は労働の対償である賃金が確実に支払われるように、5つの原則が規定してあります。

 労働基準法第24条1項
  1. 通貨で、
  2. 直接労働者に、
  3. その全額を支払わなければならない。
 労働基準法第24条2項
  1. 毎月1回以上、
  2. 一定の期日を定めて支払わなければならない。

1. 通貨払いの原則

賃金は、通貨で支払わなければなりません。

労働基準法には「通貨」の定義はありませんが、通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律によると、「日本国において強制通用力のある貨幣および日本銀行が発行する銀行券を意味する」とありますので、日本の紙幣及び硬貨で支払わなければならないということになります。

外国通貨(ドル、ユーロなど)で支払うことはできませんし、また定期券など現物支給する場合には労働者代表との間で労使協定を結ばなければならないと示されています。

2. 直接払いの原則

労働者本人に対して直接支払わなければなりません。 未成年だからといって、子が働いた賃金を両親に支払うことはできません。

3. 全額払いの原則

控除することなく全額支払わなければなりません。

法令に定めがある場合(社会保険料の控除、所得税、住民税の控除など)、労使協定などによって控除できるもの(旅行積立金、社内貯蓄制度など)は、控除して支払うことができますが、例えば職場の備品を壊した損害賠償として賃金と相殺することはできず、一度全額支払ってその後に損害賠償する必要があります。

4. 毎月1回以上払いの原則

賞与などを除いて、少なくとも毎月1回は支払わなければなりません。 給料の支払いを2か月に1度とすることはできません。

5. 一定期日払いの原則

毎月の給与日を決めてその日に支払わなければなりません。 給与日が休日の月は、その前営業日または翌営業日に支払うことは可能です。

 

■ 休業手当

事業を営んでいると、様々な事情により使用者の都合で労働者を休ませる事態も出てきます。

例えば、一人医師診療所において、

  • 医師が学会などへの出席のために休診にした場合
  • 医師の傷病のために休診にした場合

などが考えられますが、労働基準法上、使用者の事情によって労働者を休ませる場合、「休業手当」という名目で平均賃金の100分の60以上の賃金を支払わなければなりません。

労働者の生活保障と同時に、使用者の勝手な休業を抑制することを目的として設けられた規定です。

今回の新型コロナウイルスは、まさに非常事態といえる状況だと思いますが、もし、使用者・労働者が新型コロナウイルスに感染または感染が疑われる場合は、その事態によって賃金の対応の仕方もだいぶ変わってきます。

 

■ ★ 休業手当と新型コロナウイルス感染者の対応 ★

  1. 使用者が新型コロナウイルスに感染した、もしくは感染が疑われる場合
    今回の新型コロナウイルスに使用者が感染し、もしくは感染が疑われ、休診した場合は、使用者の責めに帰すべき事由ということになり、その期間について労働者へ平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払うことになります。
  2. 労働者が新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合
    職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業される場合には、一般的に「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
  3. 発熱がある労働者の自主休業と労働者への休業命令
    発熱などの症状があるが、新型コロナウイルスに感染しているかどうか分からない時点で、労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様の取り扱いとなり、病気休暇制度や有給休暇を活用するなどが考えられます。

    一方、発熱などの症状があることのみをもって労働者を休ませる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
  4. 感染した労働者を休業させる場合
    新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
コンシェルジュ 坂下 信也

いかがでしたでしょうか?

事業所によって賃金(基本給、各種手当)の考え方、計算方法は異なります。 同じ事業所で一貫性のない基本給・各種手当の金額を決められ、結果として職員ごとに不公平な待遇がなされているところも見受けられます。

一貫性がなければ労働問題が起きる火種となりますし、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から始まる同一労働同一賃金にも影響が出てきます。

また、新型コロナウイルスの影響により、休診や事業規模の縮小など経営にとってかなりの打撃を受けている事業所もあり、リスクを感じたお客様から、加入中の生命保険・損害保険が補償の対象になるのかという相談もかなり増えてきました。

 ⇒ ご自分の加入している保険の内容ご存知でしょうか?


自社(ご自身)にとって、賃金規程を見直すとともに、非常事態に陥ったときのリスク対策がきちんとできているか確認してみるものいいかもしれません。

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