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コンシェルジュ 神吉 信明

リスクマネジメント・ラボラトリー

神吉 信明

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている神吉 信明です。

様々な資産防衛対策が可能な「家族信託」。 しかし、いくら良い制度とはいえ費用は気になるところです。

そこで最終回は、「家族信託」にかかる諸費用を具体的にご紹介しつつ、よく家族信託の比較対象としてあげられる成年後見制度にかかる費用もお伝えいたします。

また最後に、家族信託が不要なケースもご紹介させていただきました。 先生の資産防衛のご参考にして頂ければ幸いです。

それでは、どうぞ。

【家族の財産をしっかり守る!家族信託】
第6回 家族信託に必要となる費用

【家族の財産をしっかり守る!家族信託】

第6回 家族信託に必要となる費用

■ 専門家報酬

家族信託を活用するためには、まず、その内容を明確にする信託契約の内容を検討し、契約書の作成を行わなければなりません。

この段階でサポートをしてもらう専門家は司法書士であるケースが多いですが、弁護士や行政書士が関与する場合も想定されます。

そして、信託契約書の作成にかかる費用ですが、まずは契約書の内容の検討、コンサルティングの段階で、50万円~100万円程度が必要です。 ただし、これは信託財産の総額が数千万~1億円を想定した場合であり、信託財産の金額に応じてコンサルティング報酬も上がっていく価格設定が一般的です。

司法書士の報酬設定として多く見受けるパターンとしては、信託財産が

  • 数千万~1億円で50~100万
  • 2億~3億円で150万~300万
  • 4億~5億円で250万~400万程度

となっています。(もちろん、依頼する専門家によって価格は異なるため、手続きを依頼する際にはあらかじめ見積もりをもらうことが必須となります。)

 

■ 実費(公証人手数料・登録免許税)

また、信託契約を締結する際には、通常、その内容を客観的に明らかにするため、公正証書として作成をします。 公正証書とは、公証人という公的機関の関与のもとに作成する文書のことをいい、公文書として取り扱われます。

公正証書として有名なものでいうと、遺言公正証書があります。

「遺言を作るなら必ず公正証書で」というお話は、一度は耳にしたことがあるかと思いますが、信託契約も財産にかかわる非常に重要な契約であるため、遺言と同じように公正証書で作成することを勧める専門家がほとんどです。

契約書を公正証書で作成した場合には、公証人に支払う手数料が必要となります。

こちらも金額は信託財産の総額によりますが、信託財産が

  • 3000万円で2万5000円程度
  • 1億円で4万5000円程度
  • 1億円を超える場合、5000万円ごとに1万3000円~1万1000円が加算

となります。

信託財産に不動産が含まれている場合には、その不動産の登記名義を受託者に変更する必要があるため、司法書士手数料と、登録免許税という税金が発生します。

司法書士手数料は不動産1か所にあたり10万円程度のことが多いです。  登録免許税に関しては、建物が固定資産評価額の0.4%、土地が固定資産評価額の0.3%となっています。

例えば、1000万円の評価額の土地の上に500万円の建物が建っていた場合には、土地の登録免許税が3万円、建物の登録免許税が2万円で合計5万円となります。

仮に、この1500万円の不動産のみを家族信託の対象とした場合、

  • 専門家報酬 50万円(税込55万円)
  • 公証人手数料 約2万5000円
  • 登記手数料 10万円(税込11万円)
  • 登録免許税 5万円

合計 73.5万円(概算)

といった費用感になります。 (専門家報酬等は専門家によって差がある可能性があるので、くれぐれも事前の見積もりにて費用感をご確認ください。)



以上のように、家族信託はスタートの段階でそれなりの費用がかかりますが、それでは、もし、何の対策もせずに成年後見制度を使わざるを得ない状況になったとしたらどうなるでしょうか。

後見人報酬は

  • 毎年30万円以上で
  • 本人が亡くなるまで支払い続ける

というのが特徴で、相当なコスト負担となる可能性があります。

資産防衛対策を検討するうえでは、家族信託、成年後見制度、両方のコストを考慮に入れ、検討しながら進めていくことが重要です。

コンシェルジュ 神吉 信明

いかがでしたでしょうか?

最終回は家族信託に必要となる諸費用について解説をさせていただきました。

それでは最後に、家族信託が不要なケースについてご紹介いたします。 実は「家族信託」をはじめとする資産防衛対策・相続対策が不要なケースというのは、実際にはほとんどありません。 とは言え全くないわけではありませんので、2つの事例をお伝えいたします。

1つ目として、高齢の親や親族が資産をほとんど持っていない場合です。

賃貸マンションに住み、毎月入ってくる年金で生活を賄い、貯蓄もほとんどないというケースですが、この場合には、そもそも防衛すべき財産がありませんので、対策する必要もありません。

次に2つ目として、収益物件などの管理運用が必要な資産がなく、かつ、病気やケガで多額の資金が必要となったり、施設入居費が必要となったりした場合に、本人以外の親族でその資金が十分に賄える場合です。

家族信託の主な機能は、管理運用が必要な財産の管理権限の確保と、万が一の際の資産凍結の回避にありますから、その両方が不要である上記のようなケースでは、必ずしも家族信託等の対策をとる必要はありません。

(ただし、資金があるからといって、資産凍結の対策が不要と簡単に判断してしまうことは避けた方が賢明です。 万が一に備えて家族信託を活用しておく方が安心です。)

6回にわたり「家族信託」についての基礎知識をお伝えさせていただきました。 大切に育んでこられた先生の資産防衛対策の選択肢になり、地域医療に専念できる一助になれれば幸いです。

いままでご愛読ありがとうございました。

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