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m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの米田です。

5回シリーズで「開業への道~開業時のしまった事例・成功事例~」をお伝えしています。

前回は、コンサルタントの選択についてお伝えをいたしましたが、いかがでしたでしょうか。 コンサルタントが開業後に必要かどうか。 開業後には税理士や社会保険労務士などと顧問契約をしているため不要との考えがある一方、その他の相談やセカンドオピニオンがあるため経営コンサルタントが必要と考える場合についてお伝えしました。

誰もが成功したいと思い開業を志すのですが、開業後の悩みの一つとして重税感があります。 これは、近年益々個人所得税率が高くなっているためです。 一方、法人税率が低くなっているため、開業時にMS法人(メディカル・サービス法人)の設立を勧めるケースが増えているようです。

そこで今回は、関西圏域で病医院の顧問を数多く持つ税理士法人エイアール税理士事務所 代表社員 原 知子税理士に、MS法人について伺ってまいりました。

それでは、原 税理士お願いします。

開業への道 第3回
開業時のしまった事例・成功事例
メディカル・サービス法人について

開業への道 第3回

開業時のしまった事例・成功事例
メディカル・サービス法人について

こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。

高額所得者の大増税時代を迎え、クリニックの院長先生からMS法人の活用についてご相談をいただく機会が増えております。 また、開業と同時に節税目的でMS法人の設立を提案する税理士、公認会計士の先生がいるとお伺いしています。

今回はMS法人設立のメリットや運営の注意事項などお伝えして、MS法人を活用するか否かの視点を持っていただきたいと考えております。 MS法人をご検討されている先生方の参考になれば幸いです。

 

■ MS法人とは

MS法人とはメディカル・サービス法人の略称です。 名前が示すとおり病院やクリニックの医療関連業務や周辺業務を行う目的で設立される会社です。 ポイントは節税を主目的としたものではなく節税を手段として次の3つの目的を実現させるための法人ですのでご留意ください。

1. 医療の純粋性の確立

「診療と管理の分離」を志向し、クリニックの院長にできるだけ診療に専念できる環境を整えることを目的とします。

2. 医療の継承性を確立

経過措置型の医療法人(出資持分ありの医療法人)に限り、出資持分は株式と同じ扱いで時価評価されるので相続財産となり、継承の際、納税負担に苦慮します。 そこで医療法人に留保される利益を合理的な経済取引でMS法人へ利益移転させ継承をスムーズにする目的でMS法人が活用されます。

3. 老後生活の安定性

MS法人は株式会社や有限会社、合同会社など一般の会社の形態が多いので医療法人のように事業の制約を受けずに事業を展開でき、クリニック引退後、MS法人の代表となって役員報酬を受け、引退時には退職金を受給することもでき、老後資金に充てる等、活用が可能です。

また、不動産を多くお持ちの院長は個人からMS法人へ所有を移転させ相続対策にも活用している事例は多くあります。

 

■ MS法人の事業分野とは

医療法人のような事業制約のないMS法人ですが、MS法人の事業分野は次の4つに分類されます。

1. 医療関連事業

クリニックの院長がMS法人に業務を外注することにより、利益をクリニックからMS法人へ出し所得分散を可能にさせます。 特に医療法人の場合は、医療法第54条で配当を禁止されていますのでMS法人へ利益を移転させ、ファミリーで役員報酬、退職金、少人数私募債など、節税を手段とした所得移転を実現させています。

代表的な取引は受付窓口・経理業務、レセプト業務、清掃業務など業務請負契約や医療機器などの資産の貸付(リース業務)です。

2. 不動産賃貸管理事業

これまではクリニックの利益をMS法人へ出すために、クリニックの建物をMS法人が所有しクリニックへ賃貸しているケースが主な取引でありました。 最近では、マンション経営やサービス付高齢者向け住宅を所有し第三者に不動産賃貸事業を行うMS法人も増えつつあります。

3.独自事業

院長夫人が美容関連事業、翻訳事業など得意分野を事業化しているMS法人もあります。 また、業績の良い医療法人の院長が経営コンサルタントと講演や研修を自主開催して、講演研修活動を事業としているMS法人もあります。 医療以外の独自事業は院長ファミリーの所得安定化にも繋がります。

4. 個人の相続対策と財産運用

個人で所有している有価証券、不動産をMS法人で所有移転させ、相続の対策を実施しているMS法人もあります。

独自事業で利益が上がると、少人数私募債など個人財産をMS法人で運用することが可能になります。 また、逆にバブル期に購入した株式、会員権などを売却して含み損失を確定させれば節税も可能です。

 

■ 法人運営の注意事項

MS法人の運営の注意点を下記に3つまとめましたので、ご参考にしていただきたいと思います。

1. キャッシュフローが悪くなるケースもある

クリニック経営の業績が悪い場合はMS法人へ移転させる資金がなく、資金繰りが厳しくなるケースがあります。 また、消費税の納税義務者となる場合が多く、クリニックとMS法人を一つのグループで捉えると消費税分がキャッシュアウトして所得分散効果が少なくなるケースがあります。

クリニックとMS法人を一つのグループと捉えたキャッシュフローの確認をお勧めします。

2. 医療機関との取引の妥当性を問われる

クリニックとMS法人の取引は同族間の取引なのでお手盛りになるケースがあります。 根拠なく取引金額を上げたり下げたりするのは後々、税務調査で問題となる可能性がありますので第三者の会社と取引する際の価格をベースに相場を逸脱しない範囲で取引金額を決定することをお勧めします。

また、取引金額の計算根拠や契約書など物的証拠(エビデンス)をしっかり残し、税務調査の際に備えてください。

3. MS法人運営の管理事務の時間とコストが増える。

MS法人の実態を明確にするためには管理事務にそれ相当な時間を要しますし、税理士の顧問料など様々なコストが増えます。

MS法人の運営は節税を目的とするのではなく手段として用い、クリニックの院長にあった目的を実現させるための法人であることを明確に位置付けてMS法人を運営して欲しいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

m3コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

開業後には、医療法人化の際、MS法人との比較検討があります。 それは、医療法人にもメリット・デメリットがあるためです。

医療法との関連が強いMS法人は、一般法人だけにあるメリットを重視するのではなく、デメリットも含め、将来的なビジョンをしっかりと持たれ、計画的に実行していただくことがなにより重要かと思います。

また、しっかりとシミュレーションをされ、1人でも多くの専門家の意見を聞かれることが成功に繋がると考えています。