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m3コンシェルジュ 松尾 貴博

リスクマネジメント・ラボラトリー

松尾 貴博

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの松尾です。

クリニックを開業されている先生方に「クリニック開業にあたり、医療分野以外で注意すべきことは何でしょうか?」とご質問すると、多くの開業医の先生方が「1. 開業場所 2. 節税対策」とお答えになります。

開業場所の選定については、例えば診療圏調査を単に機械的に行うだけではなく、患者様の受診体験を通じて医療マーケティングの目線を持つことができれば、開業後に地域に根ざしたクリニックと認知される可能性も上がってくるのではないでしょうか。

また、開業準備段階から経費について意識しておくことで、本来納める必要のない税金の納付を防ぐことができます。

そこで今回は、この2つのテーマについてお伝えしたいと思います。 執筆は、開業支援と医療モール開発に取り組んでいるアイセイ薬局の開業専門部署の方々と税理士法人シリウス 医療事業部 米山憲子税理士にお願いしました。

それでは、どうぞ。

都心型開業と郊外型開業の成功の秘訣!
「医療マーケティングの導入」と「経費節約術」

都心型開業と郊外型開業の成功の秘訣!

「医療マーケティングの導入」と「経費節約術」

1. 「医療マーケティングの導入」

■ 調剤薬局から見た医療マーケティングとは?

【 患者様の意識調査から分析する 】
先生が開業場所を選定するにあたり、医療マーケティングを共に取り組むパートナーとして、調剤薬局の情報量や物件開発力をどのように活用するべきかお伝えします。

まずは「医薬分業」について検証しながら、調剤薬局との連携のコツをお伝えします。 現在の新規開業のクリニックでは、ほとんどが院外処方です。 それに対し、患者様側の反応は逆になっており、約74%の人が「院内処方がいい」と回答しています。 (下図参照)

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(2015年にYahoo!ニュースが18万を超える人を対象に行った意識調査を基に、アイセイ薬局が図を作成)

実際の「医薬分業率」は7割に迫り、成熟期を迎えたとも言われています。 これは診療報酬上のメリットのみならず、多額となる医薬品購入資金やデッドストックによる薬剤ロスの負担減、調剤過誤や事故のリスクヘッジなど、様々なメリットが存在することに起因します。

また、ここ数年の消費税増税の影響により薬価差益の確保が難しくなったことも一因として挙げられます。 開業にあたり、院外処方を選ばれる場合は、先ほどの意識調査のギャップを認識し、「より質の高い医療サービスを提供する」という意識が大切です。

【 患者様から見た受診体験とは 】
クリニック目線では、先生が適切な診察を行って処方箋を出すまでが診療範囲になりますが、患者様は調剤薬局でお薬を受け取るまでを含めて「一連の受診体験」と認識しているようです。

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(アイセイ薬局作成)

それでは、処方箋を受け取った後に向かった薬局で、もしも「お薬の在庫が無い」「薬剤師の服薬指導が処方医の言っていたこととずれている」「薬局が閉まっている」といった場合、患者様が満足する受診体験と言えるでしょうか?

質の高い医療サービスを実現するためには、調剤薬局を含めた「医薬連携」の体制を整える必要があります。

【 マーケティング視点で患者様の受診体験を捉える 】
「ピーク・エンドの法則」をご存知でしょうか? ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが提唱する「マーケティングにおいて全体のサービスのなかで、最後の部分の質を高める、重要視する。」という考え方です。 これを患者様にとっての受診体験で考えてみます。

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(アイセイ薬局作成)

患者様は一連の受診体験において、上図のような「待ち時間の連続」を体験しています。 「ピーク・エンドの法則」によれば、「エンド」にあたる調剤薬局におけるサービスの質が、クリニックを含めた評価につながるということです。 つまり調剤薬局は『リレーのアンカー』のような役割を担っているのです。

(提供: アイセイ薬局)

この点を理解している調剤薬局では、待ち時間対策として調剤機器を積極的に導入し、調剤スピードを上げることで『物理的』な待ち時間を短縮したり、待合室にアクアリウムやライブラリーを充実させたりすることで『体感的』な待ち時間を低減させるなど様々な取り組みをしています。

【 調剤薬局のマーケティングをどう活用するのか 】
調剤薬局は開業後の医薬連携パートナーでもありますが、開業準備段階でも活用が可能です。 クリニックとマンツーマンの調剤薬局や医療モール型の調剤薬局は、クリニックが発行する処方箋の大部分を応需しており、この患者情報を基にクリニックのリアルな診療圏を把握しています。

地域医療マーケティングを重視している調剤薬局であれば、診療科ごとに地域特性や地理的分断要因の影響など多くのナレッジを有していますので、開業候補地の立地評価などの強い味方になるはずです。

調剤薬局の収益はクリニックの増患と当然連動します。 当事者意識を持ち、クリニック単体では実現の難しい様々なサポートメニューを用意している調剤薬局と連携することが望ましいと言えます。 クリニックの増患に強い調剤薬局を選定し、先生の開業チームに組み入れることも一案です。

2. 「経費節約術」

■ 開業後では遅い!? 「開業前から意識しておきたい節税対策」

【 医療機器や什器備品の見積もりの取り方 】
クリニック開業前は、多くの業者から見積もりをとって必要なものを購入します。 医療機器、レセプトコンピューターなど高額なものから、従業員のロッカーなど少額なものまで多岐にわたります。

開業後、これらの支出は減価償却費として数年にわたり経費にしたり、少額なものは支出した年に全額経費にしたりと、税法上細かく経費化できる要件があります。 また、医療機器をはじめ設備投資に関しては「税額控除」という制度があり、要件を満たせば節税メリットを大きく享受できる場合もあります。

メリットを享受するためには何が必要でしょうか? まず、見積もりの詳細な明細を出してもらうよう依頼することから始まります。 これにより、どのような節税対策をするのかが決まりますので、開業前に判断材料を揃えておくことが重要です。

加えて、新品なのか、(何年使用した)中古品なのか、なども確認していきます。

開業後に慌てて設備の支払い明細を依頼して、確定申告期限の間際になっても申告資料が揃っていないとなると、余計な税金を納付しなければならなくなる場合もありますので、お気をつけください。

m3コンシェルジュ 松尾 貴博

いかがでしたでしょうか?

今回は、「医療マーケティングをどのような観点で捉えるかということ」と「開業資金で節税対策をするテクニック」にフォーカスしてお届けしました。

 

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