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銀行から借入れしたのに、開業後に資金不足に?!

クリニック開設直後の安定経営の秘訣

m3コンシェルジュ 松尾 貴博

リスクマネジメント・ラボラトリー

松尾 貴博

皆様、こんにちは。m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの松尾です。

クリニック開設のためには、多額の開業資金を銀行などの金融機関から借入れなければなりません。先生は、勤務医から経営者という立場に変わり、ご自身で借入れ交渉をされます。

「借入れ(ローン)」と聞くと、「借入れ金額が大きくなればなる程、漠然と心配になるので、必要最小限の借入れをした方が良い。」とのお考えもあります。実際はどのようなポイントに注意して借入れをしたら良いのかをお伝えします。

それでは、どうぞ。

■ 開業後に気づいた「開業前にこうしておくべきだった!」

【 事例1 居抜き物件で開業スタート 】
クリニックの新規開業では、多額の設備投資やその他の準備資金で、1年目が赤字になることはよくあります。ある内科の先生は、運良くクリニックの居抜き物件が見つかりました。せっかく安く開業できるからということで、必要資金ぎりぎりしか借りずに開業されました。

開業当初は患者さんが増えない ⇒ 設備に古さが目立つが資金が足りず、修理ができない ⇒ 患者さんが来ない・・・。 という負のスパイラルに。

ポイント:
運転資金は開業時に余裕をもって借りたほうが良く、経営が安定してキャッシュフローに余裕ができれば、途中で繰上げ返済をすれば良いのです。金融機関にもよりますが、繰上げ返済の手数料が掛からない金融機関もあります。

【 事例2 開業後に追加融資を相談 】
ある耳鼻科の先生は開業後の数か月間の資金繰りについて、外来が増えないまま借入金の返済がスタートしてしまいました。借入金の返済開始時期は金融機関への交渉によって猶予期間を設けられます。1年、場合によっては1年半という条件も可能です。

この先生は、あるコンサルタントに開業支援を全て任せており、開業の3か月後に返済が開始される契約がされていました。結果的には、患者さんの数がまだ安定しない中で、返済がスタートしてしまい、資金が底をつきそうな危険な状況でした。

リスケジュール(返済猶予)も嫌がられて追加融資してくれるところもなく、大変苦労してやっと保証協会が100万円保証してくれて借りることができました。

ポイント:
大変苦労した結果が、たったの100万円です。開業時は何千万円も貸してくれるのに、実績がないうちは先生であっても追加融資は厳しいです。また、経営者の素質をここで厳しく見られます。開業前にきちんとした資金計画をたてられるかどうか、金融機関はここを大変重視します。

■ 【 借入金の適正額 】 開業前に先生がやるべきこと

開業を漠然と考え始めた段階で、収支計画書を作り始めることをお薦めします。その理由は、ご自身の診療内容・理念、経営に対しての考え方を数字に落とし込むことにより、どの医療機器を購入すれば良いのか、内装工事費はどの程度かかるのか、銀行からいくら借入れをするべきか、などイメージが膨らみ、実際に開業に必要なことが明確になるからです。

収支計画書作成の主な目的
  1. 具体的な開業準備をするための指針
  2. 金融機関との借入れ交渉

もちろん、初めから完璧さを求める必要はなく、行動する材料として作成してみて、プラスアルファとして金融機関から借入れをするときに利用できれば、一石二鳥ではないでしょうか。

■ どのようなポイントに注意して収支計画書を作るのか

必要資金の洗い出し(資金計画)
  • 物件にかかる資金
  • 医療機器や備品にかかる資金
  • その他の資金
具体的には、
  • 物件にかかる資金は、テナント開業であれば主に内装工事費、保証金が大きな支出になります。
  • 医療機器や備品にかかる資金は、医療機器の他、レセプトコンピューターなども含まれてきます。
  • その他の資金には、医師会入会金、看板、ホームページ作成費用などの広告宣伝費など、開業前に必要な資金を考慮します。

収入の算定
まずは、開業後月別に収入を算定していきます。 ほとんどのクリニックの収入要素は、医療保険の診療報酬であるため、1日当たりの外来患者数と保険診療平均単価、そして診療日数/月を設定することにより1か月の収入が算定されます。

外来収入/月
  = 1日当たりの外来患者数 × 保険診療単価 × 診療日数

支出の算定
支出項目としては、医薬品・医療材料費、外注検査費、人件費、地代家賃、広告費、交際費、支払利息、消耗品費などのその他諸経費、また経費にはならない借入金元金返済や生活費があります。

■ 収支計画書が一通りできたら

実際の数字をご覧ください。様々なことに気付かされると思います。
  • 予想通りの利益が出ていた
  • 患者数の見込みに季節的要因は考慮したか
  • 借入金は返済できそうか
  • 採算が取れる患者数は何人ぐらいか

収支計画書は何度でも書き直しができます。ご自身で手を加えながら作成した収支計画書は、開業地の選定や医療機器の投資金額の決定など、具体的な行動に移る際の指針となります。何種類か作成し、シミューレーションを行うことが大事です。

m3コンシェルジュ 松尾 貴博

いかがでしたでしょうか?

収支計画書は、最終的には専門家と一緒に作り上げることが望ましいのですが、開業後20年30年と経営するご自身のクリニックですから、先生ご自身でペンを加えることは大いに意義があると思います。

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