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m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

リスクマネジメント・ラボラトリー

宮地 孝郎

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの宮地です。

今回は200以上の医療機関に顧問先を持つ川庄公認会計士事務所の北原さんより、実際に開業された先生方の体験談をお伝えしていきます。

【本音の開業体験談 それぞれの開業スタイル】
第1回 新規開業編

【本音の開業体験談 それぞれの開業スタイル】 第1回

新規開業編

新規開業と言うと新設のクリニックを指していましたが、最近は第三者から承継する「新規開業」も多くなりました。 それぞれにメリット・デメリットがあり、苦労の度合いも違います。

今回から3回に亘って

  1. 「土地・建物から購入の新規開業」
  2. 「第三者から引き継ぐ承継開業」
  3. 「従来の親子間での承継開業」

それぞれ異なる開業をされた先生方にインタビューをしました。 体験談からその違いをお伝えできればと思います。

【新規開業】
土地・建物購入 開業3年目
福岡市Aクリニック A先生

Q 開業のきっかけをお聞かせください。

【A先生】
学生時代から漠然と開業するものだと思っていました。

Q ご家族からの反対はなかったですか。

【A先生】
勤務医時代に妻と出会い、当時から開業する意思は伝えていましたので、反対も不安もなかったようですね。 開業に向けて医療事務の資格、簿記の勉強をしてくれていたので、開業後は現場と経理の面で大変支えになりました。

ただ開業後、多少の苦労があったので、妻は「今、振り返ると恐ろしいことだったと思う」と言っています。

Q 開業準備でご苦労されたことはございますか。

【A先生】
銀行融資で苦労しました。 「医師は簡単に融資を受けることができるよ。」との噂も聞いていましたが、最初は金融機関からスムーズに確約をいただけませんでした。

事業計画書や診療圏調査結果も支援いただいた専門家と作成しましたが、なかなか希望の融資額が決まらず、最終的な決め手は自己資金1,000万円でした。

もともと開業することを決めていましたので、妻とも倹約に努め自己資金は1,000万円を準備していましたので良かったです。

Q 開業を志し、ご準備されていたことが大きかったですね。

【A先生】
そうですね。 アルバイトにも積極的に行っていました。 アルバイト先のさまざまな経営や異なる地域性、患者層を診察できた経験が今は活きていると思います。

Q スタッフについて、採用はどのようにされましたか。

【A先生】
ほぼハローワークと求人誌で募集しました。

ただし、当時、核となるスタッフは必要だと思い、共に仕事をしてきた看護師を一人連れてきました。 もちろん勤務先とのトラブルもなく転職してもらいました。 この方の存在は大きかったように思います。 現在も中心になり育成もしていただいています。

しかし他の先生方で、連れてきたスタッフと結果的にうまくいかず退職されたという話も聞きましたので、勤務医時代にその方の業務だけでなく、スタッフ間のコミュニケーション能力や患者さんへの対応力もしっかり見てからお誘いされた方が良いと思います。

Q 開業後に苦労されたことをお聞かせください。

【A先生】
人の問題です。 幸いなことに、人間関係は円満でしたが女性が多い職場ですので、スタッフが結婚を機に退職、出産による産休がありました。 どうしても人手不足に悩まされる時期はどこにでもあるかと思います。

人材が不足すると、どうしても既存のスタッフへ業務の負担がでてきます。 募集しても集まらなく苦労した時期もありましたが、既存スタッフの不満やストレスを妻やベテランスタッフが良い緩衝材になってくれたことで乗り切れたように思います。

外部への相談先として社会保険労務士にも力を借りました。 その際に、不満の声も含めなんでも話しやすい職場にすることと、自分自身だけで解決できると思わず、周りのスタッフや外部の専門家に力を借りることが大切だと思いました。

当院のコンセプトでもありますが「スタッフが家族を連れてきたくなるクリニック」を目指しています。 同じように「スタッフがスタッフを連れてくる職場」となり、現在は良い人材が良い人材を誘ってくれます。 おかげで安定した人員を確保できています。

実は出入りの業者さんも同じように考える必要があります。 彼ら彼女らからも良い人材を紹介してもらうことがあります。 患者さんの一人になり得る存在でもあるので無下にしないこともスタッフ一同、心掛けていますね。

Q 開業場所で苦労したことなどお聞かせください。

【A先生】
新規開業のもっとも難しい点は場所探しではないでしょうか。 そもそも希望の開業地で、集患の見込める条件の良い場所などは簡単には見つかりません。

立地は集患を左右する最重要事項でしたので、妥協はできませんでした。 視認性・車の導線(入りやすさ)・人口動態(人口増加地区)を重視し、税理士と収支計画を何度か打合せし、「どうにかして土地購入価格の予算を上げられないか」、「切り詰める費用はないか」を見直しました。

医療機器に関しては、開業当初は我慢をすることにし、一部は中古を検討しました。 その甲斐あって高値買いだったかもわかりませんが、タイミングを逃さず好条件の立地を購入できたと思います。

その後は、建築費を抑えるために患者さんから見えないバックヤードの仕様を安価に抑え、その他の機器、什器などは開業後に恩返しすることを心の中で誓いつつ、価格交渉を繰り返し、随分と安価で購入することができました。

Q これから開業される先生方にお伝えすることがあればお願いします。

【A先生】
何より立地を優先すべきだと思っています。 早期に安定した収入にするためにも患者数を増やすしかありません。 立地については競合も多くなっていますので、恵まれた立地を探すことが容易でありません。

どうしても好条件の場所がなければ、患者数の見込みがある既存のクリニックを承継することも検討材料に入れる時代かとも思います。

もう一点は、医療はサービス業だということでしょうか。 新規患者さんがクリニックと初めて接点を持つのは受付です。 受付スタッフの良い状態を作ってあげること、すなわち職場環境を整えることも開業医の仕事だということです。

口コミは医師の評判だけではありません。 スタッフもクリニックの看板であると思います。 スタッフの待遇面も最低条件はクリアしておくことです。 「近隣地域と給与に乖離がない」、「休暇の取れる仕組みにしている」など、開業当初は難しくとも、できるだけ早期に理想の環境に近づけるように事業計画に織り込むことでしょうか。

m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

いかがでしたでしょうか?

A先生のお話からは、開業前の準備が、今の安定した経営に繋がっていることがうかがえます。

「人に恵まれた」と話されていましたが、「人を大事にする」という理念が、A先生に関わる方々を応援したい気分にさせてしまうのかもしれませんね。

今回は、新規開業ならではのお悩みでしたが、次回は第三者承継をされた先生の声をお届けします。


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