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m3コンシェルジュ 坂下 信也

リスクマネジメント・ラボラトリー

坂下 信也

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている坂下 信也です。

前回のメールマガジンでは、ゴールデンウィークを例に挙げ、先生方の職場の休日がどのようになっているのかをお伝えしました。 (前回の内容はこちら

今回は、「『ワーク・ライフ・バランスの実現』に向けての働き方改革」の大きな施策の一つ、「年次有給休暇の時期指定義務」について、具体的にどのように計画を立てて実行していけばよいのか、例を挙げながら考えてみます。

【医療機関の『働き方改革』】
第2回 有給休暇 年5日の時季指定義務
計画と管理について

【医療機関の『働き方改革』】

第2回 有給休暇 年5日の時季指定義務
計画と管理について

■ 日本の有給休暇の取得率はどれくらい?

背景にあるのは「有給休暇の取得率(有給休暇の取得日数÷支給日数)の低さ」ですが、日本の有給休暇の取得率は約50%で、他の先進国と比べて極めて低い現状となっています。

有給休暇取得率の男女比は男性46.8%、女性55.4%で、業種別では、「電気・ガス・熱供給・水道業」で71.8%、「宿泊業・飲食サービス業」で32.8%と、業種によっても取得率に幅があります。 また、「医療・福祉」は52.5%で、日本の取得率の平均と同程度となっています。

「電気・ガス・熱供給・水道業」など公共インフラ系の業種は、公務員の働き方に準じた企業が多いためか取得比率が高まり、一方で工期に追われる「建設業」や、休日や連休、盆、年末年始などが書き入れ時の「宿泊業・飲食サービス業」では、有給休暇の取得率が低い傾向にあります。

また、「有給休暇を取得することに対して罪悪感をおぼえる人」が全体の約6割と高く、有給休暇の取得率が低い業種ほど罪悪感をおぼえる傾向にあります。

労働者1人平均年次有給休暇の取得状況

平成29年就労条件総合調査の概況 P7 (厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/17/dl/gaikyou.pdf

 

■ 今回の「働き方改革」によって何が変わるのか?

使用者(会社や医療機関側)は、労働者が入社・入職から6か月間継続勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日間の有給休暇を与えなければなりません。

2019年3月までは「与える」だけでよく、取得の有無に関しては労働者側の自由だったのですが、2019年4月以降、有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、年5日間の有給休暇を取得させることが使用者側に義務付けられました。

今回の義務化には罰則も設けられており、取得させなかった場合には30万円以下の罰金を科せられてしまいます。

 

■ 「有給休暇が10日以上付与される労働者」とは?

では、「有給休暇が10日以上付与される労働者」とはどのような方なのでしょうか。

正社員はもちろんのこと、パートタイマーでも、「週の労働時間が30時間以上」「週の労働日数が4日を超える場合」「年間の労働日数が216日以上の場合」のいずれかに当てはまる場合は、採用6か月経過の時点で、原則10日間の有給休暇が付与されます。

またそれ以外でも、勤続年数によっては10日間の有給休暇が付与され、今回の制度の対象になります(別表参照)。

年5日の時季指定義務 の対象者
  1. 採用後6か月以上経過した次のいずれかに該当する方・ 正社員
    • 週30時間以上働くパートタイマー
    • 週4日を超えて働くパートタイマー
    • 年間の労働日数が216日以上のパートタイマー
  2. 次のアもしくはイに該当する方
    ア. 週の労働時間が30時間未満で、かつ、週の所定労働日数が4日または年間の所定労働日数が169日~216日以下の方で、勤続年数が3年6か月以上の方

    イ. 週の労働時間が30時間未満で、かつ、週の所定労働日数が3 日または年間の所定労働日数が121日~168日以下の方で、勤続年数が5年6か月以上の方
パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者に対する付与日数

ご参考 https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf P. 3

 

■ どのような運用に変わっていくのか?

有給休暇の取得の際、今までは、各スタッフが「有給休暇が欲しい時」に有給休暇申出書などの書面によって手続きを行っているケースが多かったと思います。

2019年4月以降は、その手続きに加えて、5日間の有給休暇取得に関して下記のような手続きを取らなければならなくなりました。

[具体的な運用方法]
  1. 有給休暇の取得希望日の聞き取りを、対象になる各スタッフから行います(年度始めなど基準日を決めて1年の間で)
  2. 各スタッフは、有給休暇の希望日(5日分)を記入した書面を管理者に提出します。 管理者は、聞き取りをした希望日をもとに人員配置を決めていきますが、有給休暇取得者の重複などにより人員配置が難しい日については、希望者に「希望日の変更依頼」をします。
  3. 年間の有給休暇取得日(5日間)を各スタッフに通知します。
  4. 各スタッフは、計画された日に有給休暇を取得していきます。 決められた5日間以外の有給休暇については、2019年4月までと同じようなかたちで取得していきます。
  5. 管理者は、スタッフごとに有給休暇の取得状況を管理していきます。 運用時に有給休暇の変更希望が出た場合は、その都度調整していきます。
有給休暇計画的付与の流れ

有給休暇計画的付与の流れ

 

■ 年次有給休暇管理簿の整備

今まで作成及び保存の義務があった「労働者名簿」や「賃金台帳」と同じように、事業主は「年次有給休暇管理簿」を作成し、スタッフごとに有給休暇について管理をしなければならなくなりました。

前述の通り、正社員でなくても労働日数など一定の要件を上回れば有給休暇が発生しますので、アルバイトでも「年次有給休暇管理簿」が必要になります。 (スタッフごとに「基準日」「取得日数」「取得日」など必要事項を管理できれば様式は任意です)

最近は、クラウド形式の給与計算ソフトに勤怠アプリ・有給管理アプリが付随しているものもあり、もちろん費用はかかりますが事務負担の軽減につながりますので、導入企業は増加傾向にあります。

[有給休暇管理簿の一例]

m3コンシェルジュ 坂下 信也

いかがでしたでしょうか?

特に医療機関は、看護体制などによって必要な人員が決まっていますので、有給休暇の取得に関して、管理者やスタッフと、より一層細やかな打ち合わせが必要になると思いますし、スタッフの有給休暇の取得率上昇によって、多くの人員を確保する必要が出るなど、人件費の負担増が考えられます。

また、今回の施策によって、管理者の事務的な負担増も想定されます。

一方、ある医療機関では、2017年から「有給休暇取得目標日数」を掲げて積極的に有給休暇を取得させたり、バースデー休暇・アニバーサリー休暇を導入したりしたことで、スタッフの満足度が高まって離職率が劇的に減少し、さらに、「限られた人員の中でどう業務をこなしていくか」という各スタッフの自立心が芽生えたことで業務の効率化が図られ、利益が上がった例もあります。

今回の事象に対して、「問題」と捉えずに「変化するチャンスだ!」と考えれば、新たな転機にできるかもしれませんね。

年5日の年次有給休暇の確実な取得
わかりやすい解説
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

働き方・休み方改善指標
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11909000-Koyoukankyoukintoukyoku/0000179404.pdf



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